海野十三 『恐怖の口笛』 「すると勇君の説によると、はじめ五月躑躅の…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『恐怖の口笛』

現代語化

「それで勇坊の説によると、学生は最初ツツジの影で恋人の女の子と楽しそうに話してた。そしたら女の子は何か用事ができて、学生を残したままどこかに行っちゃった。吸血鬼は学生が1人になったところを見計らって、後ろから首を絞めて、その後首のところブスッとやって血を吸ったってわけね」
「その通りっすよ、青竜王」
「そっからその恋人の女の子って現場に戻ってきた?」
「いいえ」
「僕はそれを考えて、長いこと待ってたんだけど、結局戻ってきませんでした」
「それは不思議だね。今の話だと、絶対に帰ってくるはずだと思うんだけど。外に恋人みたいな女の人って通ってなかった?」
「はい、そうでしたよ」
「あ、そうそう。そういえば赤星ジュリアが近寄ってきたことはあったんです。でもアイツ、車で通りかかったんだって言ってたよ。それから車から降りてはこなかったけど、ジュリアの友達の矢走千鳥も近くまで来てた。でもまさかこの2人が…」
「でもこの2人以外に女の子が戻ってきたってことは無かったんだろ。そこは一応考えておかなきゃいけない。それにさっきの話では、四郎――いやその学生の日記帳の何十ページかが、いつの間にか破られてたって話があったし…」
「そのことは大辻さんが超怒ってますよ。絶対に2人に聞くんだって言って、今日出かけてったんです」
「ジュリアのイヤリングの右側はちゃんとあったけど、左側は石が見えなくて金輪だけ耳に付いてたっていうのは面白い発見だね」
「僕はイヤリングから落ちた石が、もしかしたら吸血鬼が隠れてた草むらに落ちてないかなと思って探したんだけど、見つかりませんでした。そっからジュリアが歩いたと思われる場所もくまなく探したんだけど、やっぱり見つからなかった。それでジュリアのイヤリングの青い石は、あの辺じゃ落としてないってことが分かったんですよ、青竜王」

原文 (会話文抽出)

「すると勇君の説によると、はじめ五月躑躅の陰で恋人の少女と楽しく語っていた。その話半ばに、少女は何か用事ができて、学生を残したまま出ていった。吸血鬼は学生が独りになったところを見澄まして、背後から咽喉を絞め、つづいて咽喉笛をザクリとやって血を吸ったというのだネ」
「その通りですよ、青竜王」
「それから、その恋人の少女は現場へ帰って来たかネ」
「いいえ」
「僕はそれを考えて、長いこと待っていたんだけれど、とうとう帰って来なかったんです」
「それは可笑しいネ。今の話なら、必ず帰って来る筈だと思うがネ。外に恋人らしい女は誰も通らなかったのかい」
「ええ、そうですよ」
「アッ、そういえば赤星ジュリアが近よってきたことは来たんです。でもあの人は、自動車で通りかかったんだといっていましたよ。それから自動車の中から出て来なかったけれど、ジュリアの友達の矢走千鳥も傍まできました。でもいくらなんでもこの二人が……」
「でもこの二人の外に誰も少女は帰って来なかったんだろう。一応そこを考えてみなくちゃいけない。それに先刻の話では、四郎――イヤその学生の日記帳の数十頁が、いつの間にか破られていたというし……」
「そのことは大辻さんがたいへん怒っていますよ。どうしても二人に尋ねるんだといって、今日出かけていったんです」
「ジュリアの耳飾右の方のはチャンとしていたけれど、左のは石が見えなくて金環だけが耳朶についていたというのは面白い発見だネ」
「僕は耳飾から落ちた石が、もしや吸血鬼の潜んでいた草叢に落ちていないかと思って探したんだけれど、見付からなかった。それからジュリアの歩いたと思う場所をすっかり探してみたんだけれど、やはり見付からなかった。それでジュリアの耳飾の青い石は、あの辺で落したものじゃないということが分ったんですよ。青竜王」


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