海野十三 『恐怖の口笛』 「おお、青竜王は何処へいったのか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『恐怖の口笛』

現代語化

「お、青竜王はどこ行ったんだ?」
「青竜王?」
「さっきまであそこにいたんだが、見えねぇよ」
「またどこかへ飛び出していったんだろう」
「いや雁金検事殿」
「あんたは青竜王をすごく信頼してるみたいだけど、僕はどうもそれが分かんないんだ」
「ははは。あいつなら大丈夫だよ」
「そうかねえ。――そう言うなら言うけど、さっき暗闇で戦ってた時、いくら呼んでも返事しなかったよ。そしたら『赤いイチゴの実』の口笛が聞こえてきた。そっからしばらくすると、急に青竜王の声で『痣蟹はここにいるぞ』って叫んだんだ。その間、あいつは何してたんだ?暗闇の中だから何やったか分かんねえだろ」
「あれは君、青竜王が痣蟹に組み敷かれてたから、それで声が出せなかったんだろう。それをやっとはね返せたから、それで初めて叫んだんだと思うよ」
「そうかねえ。――そもそも僕は青竜王の覆面が気に入らないんだ。向こうも取ると困るんだろうけど、こっちは捜査中気になってしょうがない。あの覆面を取らない限り、青竜王のやることは全部信用できないと思ってるんだ」
「それは君、考えすぎだと思うよ」
「だから僕は――」
「あの柱に服の切れ端と靴が挟まってたけど、あれは痣蟹が逃げ込んだんじゃなくて、あらかじめ痣蟹が用意しておいた2つを柱に挟んで、その中へ逃げたふりをして、自分は覆面をしてあの特徴的な痣を隠して、青竜王だと言ってる可能性があると思うんだ」
「ははは。君は青竜王が覆面を取ったら痣蟹だって言うんだね。いやそれは面白い。はははは」
「僕は何事も、怪しいものがあったら証拠を掴まないと安心できないんだ。それで今日まで捜査課長の席に座ってんだからね…」
「じゃ仕方がないよ。僕の身元保証が役に立たねえと思ったら遠慮なく覆面を外してみなよ、僕は別に構わないよ」
「いやそういうわけじゃないんだけど…。でも今日はもう青竜王は出てこないよ。あいつも逃げればそれで目的達成なんだし」

原文 (会話文抽出)

「おお、青竜王は何処へいったのか」
「青竜王?」
「さっきまでその辺にいたんだが、見えませんよ」
「また何処かへとびだしていったんだろう」
「イヤ雁金検事どの」
「貴官はあの青竜王のことをたいへん信用していらっしゃるようですが、私はどうもそれが分りかねるんです」
「はッはッはッ。あの男なら大丈夫だよ」
「そうですかしら。――そう仰有るなら申しますが、さっき暗闇の格闘中のことですが、いくら呼んでも返事をしなかったですよ。そして唯、あの『赤い苺の実』の口笛が聞えてきました。それから暫くすると、急に青竜王の声で(痣蟹はここにいますぞオ)と喚きだしたではありませんか。その間、彼は何をしていたのでしょう。なにしろ暗闇の中です。何をしたって分りゃしません」
「あれは君、青竜王のやつが痣蟹に組み敷かれていたんで、それで声が出せなかったのだろう。それをやッと跳ねかえすことが出来て、それで始めて喚いたのだと思うよ」
「そうですかねえ。――第一私は青竜王のあの覆面が気に入らないのです。向こうも取ると都合が悪いのでしょうが、私たちは捜査中気になって仕方がありません。あの覆面をとらない間、青竜王のやることは何ごとによらず信用ができないとさえ思っているのです」
「それは君、思いすぎだと思うネ」
「ですから私は――」
「あの柱に服の裂けた一片と靴とが挟まっていましたが、あれは痣蟹が逃げこんだのではなくて、予め痣蟹が用意しておいた二つを柱に挟んで、その中へ逃げたものと見せかけ、自分は覆面をして誰に見られても解るその痣を隠し、青竜王だと云っているかもしれないと思うのです」
「はッはッはッ。君は青竜王が覆面をとれば痣蟹だというのだネ。いやそれは面白い。はッはッはッ」
「私は何事でも、疑わしいものは証拠を見ないと安心しないのです。またそれで今日捜査課長の席を汚さないでいるんですから……」
「じゃ仕方がないよ。僕の身元引受けが役に立たぬと思ったら遠慮なく彼の覆面を外してみたまえ、僕は一向構わないから」
「イヤそういうわけではありませんが……。しかし今夜はもう青竜王は出て来ませんよ。彼は逃げだせば、それでもう目的を達したんですから」


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