GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『お律と子等と』
現代語化
「起きてたのか?」
「何かあったんですか?」
「今お母さんが用があるって言ってたから、ちょっと下に行ってきたんだ」
「用って、悪いんじゃないですか?」
「何、用って言ったって、ただ明日工場に行くんなら、箪笥の上の引き出しに単衣物があるって言うだけなんだ」
「でもなんだかやばそうですね。今行ってみたら、やっぱりすごく苦しそうだったよ。おまけに頭も痛いとか言って、ずっと首を動かしてるんだ」
「戸沢先生にまた注射してもらっちゃどうですか?」
「注射は何度もできないそうだから、――どうせ死ななきゃいけないとしても、苦しみだけでももう少し楽にしてあげたいんだけどね」
「お母さんなんかは来世もよさそうなのに、――どうしてこんなに苦しむんでしょうね」
「みんなまだ起きてるの?」
「叔母さんは寝てる。でも寝てるのかどうだか、――」
「お父さん。お母さんがちょっと、――」
「今行くよ」
「僕も起きます」
「お前は起きなくていいよ。何かあったらすぐに呼びに行くから」
原文 (会話文抽出)
「誰?」
「起きていたのか?」
「どうかしたんですか?」
「今お母さんが用だって云うからね、ちょいと下へ行って来たんだ。」
「用って、悪いんじゃないんですか?」
「何、用って云った所が、ただ明日工場へ行くんなら、箪笥の上の抽斗に単衣物があるって云うだけなんだ。」
「しかしどうもむずかしいね。今なんぞも行って見ると、やっぱり随分苦しいらしいよ。おまけに頭も痛いとか云ってね、始終首を動かしているんだ。」
「戸沢さんにまた注射でもして貰っちゃどうでしょう?」
「注射はそう度々は出来ないんだそうだから、――どうせいけなけりゃいけないまでも、苦しみだけはもう少し楽にしてやりたいと思うがね。」
「お前のお母さんなんぞは後生も好い方だし、――どうしてああ苦しむかね。」
「みんなまだ起きていますか?」
「叔母さんは寝ている。が、寝られるかどうだか、――」
「お父さん。お母さんがちょいと、――」
「今行くよ。」
「僕も起きます。」
「お前は起きなくっても好いよ。何かありゃすぐに呼びに来るから。」