海野十三 『蠅』 「結果は如何でした」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『蠅』

現代語化

「結果は?」
「ざっと言うと、このハエのほとんどは、イエバエじゃなくて、シバエってやつです。人を刺す能力があるハエで、1種類だけです。普通は牛舎とか馬小屋にいるんですが、こいつはちょっと違うことがわかりました。つまり、このハエは、自然に生まれたんじゃなくて、育てられたものから孵ったんです」
「すると、誰かが孵化したってことですか?」
「そういうことです。それが断言できるのは、このハエが、普通のハエにあるようなカビを持ってないからです。カビの種類がめちゃくちゃ少ない。普通なら14、5種類はあるはずなのに、たった1種類しかない。これはすごく変です。お嬢様育ちのハエって言えますね」
「お嬢様育ちのハエ?あはははは」
「その1種類のカビって、一体どんなものですか?」
「それが――それがどうやら、珍しい菌ばっかりなんです」
「珍しいカビですか?」
「そうです。似てるものといえば、まずマラリア菌ですかね。とにかく、日本で発見されたことがない」
「マラリアに似てるといえば、おお、あれだ」
「今大流行してる奇病の病原菌もマラリアに似てるって話じゃないですか。最初はマラリアだと思って、マラリアの治療をして治る予定だったのに、治るどころか、治らなきゃいけない日に、その患者の息の根が止まった。じゃ、あのハエが持ってるカビが、あの奇病を起こしたんじゃないですか?」

原文 (会話文抽出)

「結果は如何でした」
「大体を申しますと、この蠅の多くは、家蠅ではなくて、刺蠅というやつです。人間を刺す力を備えているたった一種の蠅です。普通は牛小屋や馬小屋にいるのですが、こいつはそれとはすこし違うところを発見しました。つまり、この蠅は、自然に発生したものではなくて、飼育されたものから孵ったのだということが出来ます」
「すると、人の手によって孵されたものだというのですね」
「そういうところです。なぜそれが断言できるかというと、この蠅どもには、普通の蠅に見受けるような黴菌を持っていない。極めて黴菌の種類が少い。大抵なら十四五種は持っているべきを、たった一種しか持っていない。これは大いに不思議です。深窓に育った蠅だといってよろしい」
「深窓に育った蠅か? あッはッはッはッ」
「その一種の黴菌とは、一体どんなものですか」
「それが――それがどうも、珍らしい菌ばかりでしてナ」
「珍らしい黴菌ですって」
「そうです。似ているものといえば、まずマラリア菌ですかね。とにかく、まだ日本で発見されたことがない」
「マラリアに似ているといえば、おお、あいつだ」
「いま大流行の奇病の病原菌もマラリアに似ているというじゃないですか。最初はマラリアだと思ったので、マラリアの手当をして今に癒ると予定をつけていたが、どうしてどうして癒るどころか、癒らにゃならぬ日には、その病人の息の根が止まっていた。では、あの蠅の持っている黴菌というのが、あの奇病を起させたのじゃないですか」


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