海野十三 『柿色の紙風船』 「あーら、あたし知らないわよ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『柿色の紙風船』

現代語化

「えーっと、いないわよ」
「本当だね。いない」
「ど、どこ行ったんでしょうね」
「トイレ行ったんじゃない?」
「あー、トイレね。そうかしら……でも変よね。この人、トイレしちゃいけないのよ」
「え、なんで?」
「なんでって、この人、つまり……あのね、痔が悪いのよ。それでラジウムで焼いてるんです。分かるでしょ。肛門にラジウムを突っ込んでるんだから、トイレしちゃいけないのよ」
「治療中だからね」
「それもそうだけどさ、もしトイレしてる間に下に落ちちゃったらいけないでしょ。ラジウムって小さいから、どこに行ったかわかんないもん」
「そうね。ラジウムって高いんでしょ」
「そうなのよ。看護婦さんが言ってたわ。鉛筆の芯くらいの太さで1センチくらいの長さなのに、今の値段で50〜60万円もするんだって。大変よ、あれがなくなったら。あたし、トイレに行って探してみる。でももし見つからなかったら、あたし、どうしよう」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ、早く探しに行って」
「そうね。あー、大変!」

原文 (会話文抽出)

「あーら、あたし知らないわよ」
「あーら、本当だ。居ないわネ」
「ど、どこへ行ったんでしょうネ」
「ご不浄へ行ったんじゃないこと」
「ああ、ご不浄へネ。そうかしら……でも変ね。この方、ご不浄へ行っちゃいけないことになってんのよ」
「まあどうして?」
「どうしてといってネ、この方、つまり……あれなのよ、痔が悪いんでしょ。それでラジウムで灼いているんですわ。判るでしょう。つまり肛門にラジウムを差し込んであるんだから、ご不浄へは行っちゃいけないのよ」
「治療中だからなのねェ」
「それもそうだけれどサ、もし用を足している間に、下に落ちてしまうと、あのラジウムは小さいから、どこへ行ったか解らなくなる虞れがあるでしょう」
「そうね。ラジウムて随分高価いんでしょ」
「ええ。婦長さんが云ってたわ。あの鉛筆の芯ほどの太さで僅か一センチほどの長さなのが、時価五六万円もするですって。ああ大変、あれが無くなっちゃ大変だわ。あたし、ご不浄へ行って探してみるわ。だけどもし万一見付からなかったら、あたし、どうしたらいいでしょうネ」
「そんなことよか、早く行って探していらっしゃいよ」
「そうね。ああ、大変!」


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