GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『ゴールデン・バット事件』
現代語化
「うん、東京にいるのが嫌になって、旅に出てた。神戸の辺をブラブラしてたんだ。あっちの方は六甲とか、有馬とか、舞子明石とか、いいところばっかりだな」
「ほう、そうか。じゃ誘ってくれればよかったのに」
「でもブラブラしてたって言いながら、波止場仲仕をしてたんだぜ」
「波止場仲仕を、か?」
「ところで君、最近ゴールデン・バットに行ってるかい?」
「行ってるけど」
「行ってるけどっていうことは、あまりうまくいってないみたいだな。あそこも金とか海原が来なくなって、寂しくなっただろう」
「その代わりすごい後任者が詰めかけてるよ」
「それは誰のことだい?」
「君にもわかるだろう。あの丘田医師のことだよ」
「そうか。丘田が行ってるのか。相手はどの女だい?」
「それが例のチェリーなんだ。チェリーは最近、文句なしのナンバー・ワンだよ。君江もいるにはいるけど昔の影もない。でもおとなしくなったよ。おとなしくといえば、あの事件以来不思議とみんながおとなしくなったな。あれから考えると金って男は、悪魔みたいなところのあるすごい天才だったんだな」
「タバコの方は相変わらずみんなやってるかい?」
「タバコって言うと……」
「ああタバコのことでしょ。それならカフェ・ゴールデン・バットのことだ。看板どおりにゴールデン・バットを忠実に使ってるよ。うまい広告戦略だな。そういえば最近、女たちがこぞってケースに入ったバットを持ち歩いて、それをパイプに挿してプカプカ吸ってるんだ。他では見られない光景だな」
「ふーん、なるほど」
「じゃ一つ――」
「今夜は久しぶりにバットに一緒に連れてってやるけど、その前に君にちょっと付き合ってほしいところがあるんだ」
「最初はここだよ」
「ちょっと劇薬売買簿を見せてほしいんですが。ここに本庁からの命令書がありますが……」
原文 (会話文抽出)
「オイ何処へ行ってたのか」
「うん、東京にいるのが嫌になって、旅に出ていた。実は神戸の辺をブラブラしていたというわけさ。あっちの方は六甲といい、有馬といい、舞子明石といい、全くいいところだネ」
「ほう、そうか。じゃ誘ってくれりゃいいものをサ」
「ところがブラブラしていたとはいいながら、波止場仲仕をやっていたんだぜ」
「波止場仲仕を、か?」
「ときに君は、近頃ゴールデン・バットへ行っているかい」
「行ってはいるがネ」
「行ってはいるがネというところでは、あまり成功していないようだネ。あすこも金だの海原氏が一時に行かなくなって、寂しくなったことだろう」
「その代り大した後任者が詰めかけているよ」
「そりゃ誰のことだい」
「君には解っているのだろう。あの丘田医師のことさ」
「そうか。丘田氏が行っているか。相手はどの女だい」
「それが例のチェリーなんだ。チェリーはこの頃、断然ナンバー・ワンだよ。君江も居るには居るが昔日の俤無しさ。しかし温和しくなった。温和しいといえば、あの事件からこっち、不思議に誰も彼もが温和しくなったぞ。あれから思うと金という男は、悪魔のようなところのある素晴らしい天才だったんだナ」
「煙草の方は相変らず皆でやっているかい」
「煙草というと……」
「ああ煙草のことかい。それならカフェ・ゴールデン・バットのことだ。看板どおりのものを忠実に愛用しているさ。うまい宣伝手段もあったもんだネ。そういえば近来、女ども、バットをてんでにケースに入れていてネ、それを揃いも揃ってパイプに挿んでプカプカふかすのだ。他にはちょっと見られない風景だネ」
「ふーん、なるほど」
「じゃ一つ――」
「今晩は久しぶりにバットへ一緒に連れていって貰うとして、その前に君にちょっと附き合ってもらいたいところがあるんだが」
「最初はここだよ」
「ちょっと劇薬売買簿を見せて貰いたいのですがネ。ここに本庁からの命令書がありますが……」