海野十三 『ゴールデン・バット事件』 「もしや金の部屋に寝ていたらしい若い女とい…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『ゴールデン・バット事件』

現代語化

「もしかして金の部屋に寝てた若い女って、丘田さんのところにあった靴跡の女じゃないのかね?」
「それは極端すぎると思うよ。でも丘田さんのところにいた女が、洋装をしてたことがわかってよかった」
「でも君の言う隣の部屋に寝てた若い女は、直接犯行に関わってるのかい?」
「そこが悩ましいんだ」
「その女が犯人らしいところもあると思う。そいつは踏みつけられたゴールデン・バットからわかる。女はあのベッドの上に、金と寝てたくらいだ。だから靴は脱いでたと思う。俺には意味がわからないけど、状況から考えると女は凶行後、あのバットを箱から出して撒いたんだ。だから注意してバットを踏まずに部屋を出られたんだ。その後で短刀を持った男が闖入したけど、バットが転がってることに気付かないもんだから、踏みつけてしまったと考えられる」
「でもそれは、あの短刀の男が、箱から出したとしても理屈がつくじゃないか」
「それは問題ない。あの男はもともと怪しい奴だから、タバコの上の疑惑が加わっても捜査にはそれほど困らないんだ。だってあの砲丸を金の肩に投げつけるだけの力は、あの男には十分あるって認められるし、それから現にあの部屋から出てきたところを見られてる。でも犯人が若い女の方だとすると、タバコはかなり重要な証拠になると思う。金が目覚めてる間は、あんなにタバコを撒き散らせない。男は相当もがいて重傷を負ったって認められるから、そうするとバットが踏みつけられることなく満足に転がってるはずがない。そうかと言って男がベッドで寝てる間にあのタバコを撒いたわけでもない。それは男がベッドから遠く離れたところで重傷してるからわかる。ベッド以外に男が寝られる場所なんてない。どう考えてもあのタバコは、男に凶行を加えた上で撒いたものに違いないんだ。もう一つ、砲丸を投げられるのは、どの若い女にもできるってわけじゃないんだ。それとも君は、華奢な女性が砲丸を相手の肩に投げつけることができる場面を想像できるか?」
「さあ、それはまず無理だと思う。その女が気が狂って、馬鹿力っていうのを出すのでもなければね」
「気が狂って? 気が狂ってるとしたら、あの場をあんなに巧みに逃げられるだろうか?」
「ないこともないぞ」
「こういう場合だ、気が変になった女が、金に重傷を負わせた。途端に正気に戻ったとすると……」
「もうやめよう。はははは」
「帆村君、ちょっと来てくれないか?」

原文 (会話文抽出)

「もしや金の部屋に寝ていたらしい若い女というのは、丘田氏のところにあった靴跡の女ではないのかネ」
「それは独断すぎると思うネ。しかし丘田氏のところにいた女が、洋装をしていることが判ったのはいいことだ」
「しかし君の云う隣りの室に寝ていた若い女は、直接犯行に関係があるのかい」
「そこに実は迷っている」
「その女が犯人らしいところもあると思う。そいつは踏みつけられたゴールデン・バットから考える。女はあのベッドの上に、金と寝ていた位だ。だから靴は脱いでいたものと思う。僕には意味が解らないが、状況から云って女は兇行後、あのバットを箱から出して撒いたのだ。だから注意をしてバットを踏まずに外に出ることができた。そのあとで短刀をもった男が闖入したが、バットが滾れていることには気付かないもんだから、踏みつけてしまったものと考えられる」
「しかしそれは、あの短刀の男が、箱から出したとしても理屈がつくじゃないか」
「それは別に構わない。あの男は元々怪しい節があるのだから、煙草の上の嫌疑が加わっても捜索には大して困らないのだ。なぜかといえば、あの砲丸を金の肩に投げつけるだけの力は、あの男には十分にあると認められるし、それからまた現にあの部屋から出てきたのを見られている。しかし犯人が若い女の方だとすると、煙草は可也重要な証拠になると思う。金が目醒めている間には、あんなに煙草を撒き散すことは出来ない。男は相当抵抗の末重傷を加えられたと認められるから、そうなるとバットが踏みつけられることなしに満足に転がっている筈がない。そうかと云って男がベッドに睡っている間にあの煙草を撒いたのでもない。其は男がベッドから遠く離れたところで重傷しているので解る。ベッド以外に男が睡っていられるところなんてあるものじゃない。どうしてもあの煙草は、男に兇行を加えた上で撒いたものに違いないとなるじゃないか。もう一つ砲丸を擲げることは、どの若い女にも出来るという絶対の芸当ではないのだ。それとも君は、脆弱い女性にあの砲丸を相手の肩へ投げつけることが出来る場合を想像できるかネ」
「さあそれは、まず出来ないと思うネ。その女が気が変にでもなって、馬鹿力というのを出すのでも無ければネ」
「気が変に? 気が変だとすれば、あの場をあんなに巧みに逃げられるだろうか」
「ないこともないぞ」
「こういう場合だ、気が変になった女が、金に重傷を負わした。途端に癒ったとすると……」
「もう止そう。はッはッはッ」
「帆村君、ちょっと来て下さらんか」


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