GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『赤外線男』
現代語化
「この撮影者は誰だ?」
「あいつです」
「あいつか。深山楢彦――あいつの仕業なんだ。子爵夫人と俺はヤっちまってたんだ。深山は夫人に惚れてた。あいつは俺たちの密会現場を隠れて覗き、真っ暗闇の中でこの赤外線映画を撮ったんだ。深山はそれを使って、何回も可哀想な子爵夫人を脅した。一度、夫人がフィルムの一部を奪ったんだけど、燃やされてしまった。バッグに残ってたフィルムの焦げ跡、あれのことだったんだ。鬼畜の深山は、赤外線技術を悪用して、それまでにも人の寝室をコソコソ写真に撮って、それを楽しんでた変態野郎なんだ。でもまだ夫人に未練があったから、言うこと聞かないとあの映画を公開するぞって脅した。夫人はもう何もかも諦めて、新宿のホームから飛び込んだんです。これも全部、深山のせいだ。夫人は身元がバレるのを怖がって、いつもあんな格好をしてた。ありふれた、どこにでもあるようなものを集めたんです。つまらない服とか持ち物とか。それが上手く作用して隅田さんの妹と間違えられたんでしょう。顔面がぐちゃぐちゃになったのは、神様が夫人の心を哀れんでくれたからでしょうか。俺は復讐を誓った。そして深山の部屋に忍び込んで、あのフィルムを奪い返したんです。あいつを探したけど、ベッドはあるのに姿が見当たらない。もうとっくに逃げやがった後だったんです。それから俺は……」
原文 (会話文抽出)
「潮」
「この撮影者は誰か」
「あいつです」
「あいつです。深山楢彦――彼奴がやったんです。子爵夫人と僕とは間違ったことをしていました。深山は而も夫人に恋をしていたのです。彼奴は私達の深夜の室をひそかに窺って暗黒の中にあの赤外線映画をとってしまったんです。深山はそれをもって可憐なる子爵夫人を幾度となく脅迫しました。一度は夫人があのフィルムの一端を奪ったのですが、それは焼いてしまいました。バッグの底にのこっているフィルムの焼け屑は、あれだったんです。鬼のような深山は、赤外線利用の技術を悪用して、それまでにも、人の寝室を密かに写真にとっては、打ち興じていたという痴漢です。しかし飽くまで夫人に未練をもつ彼は、夫人が意に従わないときはあの映画を公開するといって脅かしたのです。夫人は凡てを観念し、とうとう新宿のプラットホームからとびこまれたのです。これも皆、深山の仕業です。夫人は身許のわかることを恐れて、いつもあのような服装を持って居られました。あれは最も平凡な、世間にザラにある持ちものを集められたのです。いわば月並の衣類なり所持品です。それがうまく効を奏して隅田氏の妹と間違えられたのです。顔面の諸に砕けたのは、神も夫人の心根を哀み給いてのことでしょう。僕は復讐を誓いました。そして深山の室に闖入して、あのフィルムを奪回したのです。彼奴を探しましたが、どうしたものかベッドはあっても姿はありません。早くも風を喰らって逃げてしまった後だったのです。それから僕は……」