海野十三 『赤外線男』 「何故、僕を見て逃げようとしたのだ。署の戸…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『赤外線男』

現代語化

「なんで僕を見て逃げようとしたんだ。警察の入口を覗くなんて、何のつもりだ!」
「いや、申し上げさせてください」
「実は大間違いをしてしまったんです」
「うむ」
「昨夜こちらに伺って、妹の梅子の轢死体を受け取って帰りましたが、とても世間様に顔向けできないような死に方だったので、お通夜も身内だけで行い、今日の夕方、先祖代々のお墓がある永正寺の墓地に連れて行って葬ったんです」
「それで……」
「お葬式も終わって、自宅の仏壇の前で、親戚や家族みんなで供養をしていたところ、丁度今から30分ほど前に、玄関がガラッと開いて……梅子が帰ってきたんです」
「なにーッ、梅子が帰ってきた?」
「死んだはずの梅子が帰ってきてしまったんです。これはきっと幽霊が出たんだと思って、しばらくの間誰も近づかなかったんですけど、いろいろ様子を見たり話したりしているうちに、どうやら生きてる梅子っぽい気がしてきました。それでみんなで聞いてみると、梅子は情夫と熱海に行っていたというんです。それを聞いて親戚は夢のように喜んでいましたが、一方で、どうにも……」
「バカなやつ!」
「では昨夜警察から引き取って行った若い女性の轢死体は、あなたの妹ではなかったということですか?」
「どうにもこうにも……」
「どうにもこうにもで、済むと思うな!」

原文 (会話文抽出)

「何故、僕を見て逃げようとしたのだ。署の戸口を覗うなんて、何事かッ」
「いや申します、申上げます」
「実は大変な間違いをやっちまったんです」
「うむ」
「昨夜この警察へ出まして、妹梅子の轢死体を頂戴いたして帰りましたが、まあこのような世間様に顔向けの出来ない死に様でございますから、お通夜も身内だけとし、今日の夕刻、先祖代々伝わって居ります永正寺の墓地へ持って参り葬ったのでございます」
「それから……」
「葬いもすみまして、自宅の仏壇の前に、同胞をはじめ一家のものが、仏の噂さをしあっていますと、丁度今から三十分ほど前に、表がガラリと明いて……仏が帰って来たのでございます」
「なにーッ、仏が帰って来た?」
「死んだ筈の梅子が帰ってきたんです。こりゃ、てっきり化けて出たのだと思い、一同しばらくは寄りつきませんでしたが、いろいろ観察したり押問答をしているうちに、どうやら生きている梅子らしい気がして来ました。そこで寄ってたかって聞いてみますと、梅子のやつ情夫と熱海へ行っていたというのです。それを聞いて同胞は、夢のように喜び合ったわけでございますが、一方に於きまして、真にどうも……」
「莫迦な奴ッ」
「では昨夜本署から引取っていった若い女の轢死体というのは、お前の妹ではなかったというのだな」
「どうも何ともはや……」
「何ともはやで、済むと思うかッ」


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