GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『爬虫館事件』
現代語化
「そうです、私のです」
「大きいですね」
「僕らは動物のスケッチを入れるんで、こんな特注品じゃないとダメなんです」
「こっちに、同じような形の大きなタンクみたいなのが3つ横になってますけど、これは何ですか?」
「あれは僕の学位論文で使った装置なんです。今は使ってないので、中は空です」
「前は何が入ってたんですか?」
「いろいろに使いますけど、ヘビが風邪を引いた時は、この中に入れて蒸気を当てたりします」
「でも、液体でも入ってそうなタンクですね」
「お湯を入れたりすることもあります」
「でも蟒の呼吸する穴もないし、それに鍵がかかってますね」
「それはとにかく、論文が通るまでは、中身を見せたくないんです」
「論文のタイトルは?」
「ニシキヘビの内分泌腺について――です」
「この建物は天井から床まで調べましたけど、何も見つかりませんでした。残ってるのはあの3つのタンクだけですが、鴨田さんの言葉を信じてそのままにしておきます」
「ちょっと待って下さい。あのタンクはぜひ調べてください」
「でも開けられないですよ」
「そんなことないじゃないですか。ね、鴨田さん、開けたほうが鴨田さんのためにもいいですよ。あのタンク一つで、潔白になるんじゃないですか?」
「でも、そう簡単に開けられません」
「あれを開けると、爬虫館の室温や湿度が急激に下がって、爬虫類に大打撃を与えるから、ダメなんです」
「大したことはないと思うんですけど、開けてみませんか?」
「それはダメです。私は園長から爬虫類をしっかり預かってるんで、開けない権利があります。でも、他を調べてどうにも手に負えなくなったら開けることにしますけど、それにはちょっと準備が必要です。この爬虫たちを、元いた暖室に移すんですけど、その部屋を十分に温めて、湿度を整えてあげないとダメなんです」
「困ったなあ」
「別室の準備には何時間くらいかかりますか?」
「5〜6時間くらいでしょうか」
「それは大変だ。じゃあ、私もちょっと考えてみますよ」
「その間に他の部屋を調べてきませんか?西郷さん、調餌室というのを案内してください」
原文 (会話文抽出)
「鴨田さんの鞄ですか、これは」
「そうです、私のです」
「随分大きいですね」
「私達は動物のスケッチを入れるので、こんな特製のものじゃないと間に合わないのです」
「こっちの方に、同じような形をした大きなタンクみたいなものが三つも横になっていますが、これは何ですか」
「それは私の学位論文に使った装置なんです。いまは使っていませんので、空も同様です」
「前は何が入っていたのですか」
「いろいろな目的に使いますが、ヘビが風邪をひいたときには、此の中に入れて蒸気で蒸してやったりします」
「それにしては、何だか液体でも入っていそうなタンクですね」
「ときには湯を入れたりすることもあります」
「だが蟒の呼吸ぬけもないし、それに厳重な錠がかかっていますね」
「これは兎に角、論文通過まで、内部を見せたくない装置なんです」
「論文の標題は?」
「ニシキヘビの内分泌腺について――というのです」
「もうこの建物は天井から床下まで調べましたが、異状がありませんでした。唯残っているのは、あの三つのタンクですが、お言葉を信用してそのままにして置きます」
「待って下さい。あのタンクは、是非調べて下さい」
「でも開けられないのですよ」
「そんなことは無い。ね、鴨田さん、開けた方が貴方のためにもいいですよ。あのタンクだけで、清浄潔白になるのじゃありませんか」
「いやそう簡単に明けられません」
「あれを明けると、爬虫館の室温や湿度が急降して、爬虫に大危害を加えることになるので、ちょっとでも駄目です」
「私は大したことはあるまいと思うのですが、演ってみては?」
「いやそうは行きません。私は園長から相当の責任を持って爬虫類を預っているのですから、拒絶する権利があります。尤も他を求めて、どうにも解決の鍵が見つからぬときは開けもしましょうが、それにはちょっと準備が入ります。この爬虫たちを、元居た暖室の方へ移すのですが、それにはあの室を充分なところまで温め、湿度を整えてやらねばならんのです」
「弱ったな」
「一体何時間あったら、別室の準備ができるのです」
「まア五時間か六時間でしょうね」
「そりゃ大変だ。じゃ私も暫く考えてみましょう」
「その間に別の部屋を検べて来ましょう。西郷さん、調餌室というのを案内して下さい」