GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『爬虫館事件』
現代語化
「いつごろ気づいたんですか？」
「全く困ったことになっちゃいましたよ」
「いつ気がついたってことはないんですけど、怪しいなと思ったのは、あの日のお昼過ぎですかね。園長が全然食事に戻ってこなかったんで」
「園長さんは午前中何してたんですか？」
「8時半に出勤するとすぐ園内を全部一回りして、それが1時間くらいかかるんですけど。それから11時前まで事務仕事をして、それからまた園内を回るんですけど、その時は特にどこって決まってなくて、朝のうちに気になった檻に行って、動物のお世話をしてるみたいですね。失踪したあの日も、その通りの流れだったようです」
「その日、どの動物のお世話をするかっていう話はしてなかったんですか？」
「してなかったですね」
「園長さんを最後に見た人って誰ですか？」
「さあ、さっき警察の人が来て調べていったんですけど、その時に聞いた話だと、一人は爬虫館の鴨田兎三夫って理学士医学士って人と、もう一人は小禽暖室の椋島二郎って畜養主任の2人です。でも、この2人が園長さんを見た時間ってのがほぼ同じで、どっちも11時20分頃なんだって。2人とも、園長さんが入ってきて2〜3分くらい注意して出ていったらしいんですけど、そのまま出て行ったそうです」
「その爬虫館と小禽暖室ってどれくらい離れてるんですか？」
「あとで案内しますけど、20メートルくらい離れた隣同士です。ただ、その間にちょっと奥まったところに、調餌室って建物があるんですけど、ここは動物にあげる餌を作ったり置いておくところです。ちょっと図面描いてみますね、こんな感じです」
「この20メートルの空き地には何もないんですか？」
「いや、桐の木が12本くらい植わってます」
「その調餌室に園長さんは寄りませんでした？」
「今朝調べた時は、園長さんは入ってなかったって言ってますよ」
「それは誰が言ったんですか？」
「畜養員の北外星吉って主任です」
「園長さんが完全にいなくなったって分かってから前後で何があったか話してもらえますか？」
「分かりました。閉園時間が近づいても園長さんが帰ってきません。それで見てみると、帽子と上着はそのまま残ってて、家から届いたお弁当もそのまんまなんです。このまま黙って帰るわけにもいかないので、畜養員と園丁を全員集めて園内を隅から隅まで探しました。私は園丁の比留間って人を連れて、猛獣の檻を詳しく調べましたけど、何も異常はありませんでした」
「素人考えですけど、例えば河馬のいる水槽の底とかに死体が隠れてないか調べましたか？」
「なるほどごもっともです」
「そういう場所は、ちょっと準備しないと調べられないんで、すぐにはやらないんですけど、今日の午後には一つずつ調べていきますよ」
「それは都合がいいですね」
「じゃあ、私も手伝わせてください」
原文 (会話文抽出)
「園長さんが失踪されたそうで御心配でしょう」
「一体いつ頃お気がつかれたのですか」
「全く困ったことになりましたよ」
「いつ気がついたということはありませんが、不審をいだいたのは、あの日の正午過でしょう。園長が一向食事に帰ってこられませんでしたのでね」
「園長は午前中なにをしていられたのです」
「八時半に出勤せられると、直ぐに園内を一巡せられますが、先ず一時間懸ります。それから十一時前ぐらい迄は事務を執って、それから再び園内を廻られますが、そのときは何処ということなしに、朝のうちに気がつかれた檻へ行って、動物の面倒をごらんになります。失踪されたあの日も、このプログラムに別に大した変化は無かったようです」
「その日は、どの動物の面倒を見られるか、それについてお話はありませんでしたか」
「ありませんでしたね」
「園長を最後に見たという人は、誰でした」
「さあ、それは先刻警察の方が来られて調べてゆかれたので、私も聞いていましたが、一人は爬虫館の研究員の鴨田兎三夫という理学士医学士、もう一人は小禽暖室の畜養主任の椋島二郎という者、この二人です。ところが両人が園長を見掛けたという時刻が、殆んど同じことで、いずれも十一時二十分頃だというのです。どっちも、園長は入って来られて二三分、注意を与えて行かれたそうですが、其の儘出てゆかれたそうです」
「その爬虫館と小禽暖室との距離は？」
「あとで御案内いたしますが、二十間ほど距った隣り同士です。もっとも其の間に挟ってずっと奥に引込んだところに、調餌室という建物がありますが、これは動物に与える食物を調理したり蔵って置いたりするところなんです。鳥渡図面を描いてみますと、こんな工合です」
「この二十間の空地には何もありませんか」
「いえ、桐の木が十二本ほど植っています」
「その調理室へ園長は顔を出されなかったんでしょうか」
「今朝の調べのときには、園長は入って来られなかったと云っていました」
「それは誰方が云ったんです」
「畜養員の北外星吉という主任です」
「園長がいよいよ行方不明と判った前後のことを話していただけませんか」
「よろしゅうございます。閉園近い時刻になっても園長は帰って来られません。見ると帽子と上衣は其儘で、お自宅から届いたお弁当もそっくり其儘です。黙って帰るわけにも行きませんので、畜養員と園丁とを総動員して園内の隅から隅まで探させました。私は園丁の比留間というのを連て、猛獣の檻を精しく調べて廻りましたが異状なしです」
「素人考えですがね、例えば河馬の居る水槽の底深く死体が隠れていないかお検べになりましたか」
「なる程ご尤もです」
「そういう個所は、多少の準備をしなければ検べられませんので直ぐには参りませんでしたが、今日の午後には一つ一つ演っているのです」
「そりゃ好都合です」
「すぐに、私を参加させていただきたいのですが」