海野十三 『夜泣き鉄骨』 「さァ、こいつだ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『夜泣き鉄骨』

現代語化

「さあ、こいつだ」
「最後に、お前さんから、教えてもらいたいのは」
「そうだね、これは――」
「分からないのかい?」
「うんにゃ、分からないことも、ないけど」
「じゃ、何て薬だい?」
「それは、言うのを遠慮する――」
「教えないというのか?」
「仕方がない。これは薬屋仲間で、禁止されている薬なんだ」
「禁止だろうとどうだろうと、俺は、聞かないと、黙ってはいない」
「脅かさないでくださいよ、組長さん。それなら言いますが、この薬の作用はですね、人間の柔らかい皮膚を溶かす力があるんです」
「そうか、柔らかい皮膚を、溶かすんだな」
「それ以上は、言えません」
「じゃあ、先ほど見せた注射器の底に残っていた茶色の付着物は、この薬じゃなかったのかい?」
「さあ、どうでしょうか。これは元々茶褐色の液体なんです。ほら、振ってみると、ガラスのところに、茶色っぽい色が見えるでしょう」
「それとも、やっぱりあれは、血の跡か。いや大いに、ご苦労だった。これは、少ないけど、お礼だ」

原文 (会話文抽出)

「さァ、こいつだ」
「最後に、お前さんから、教えて貰いたいのは」
「そうだね、これは――」
「判らねえのかい」
「うんにゃ、判らねえことも、ねえけれど」
「じゃ、何て薬だい」
「そいつは、云うのを憚る――」
「教えねえというのだな」
「仕方が無い。これァ薬屋仲間で、御法度の薬品なんだ」
「御法度であろうと無かろうと、わしは、訊かにゃ、唯では置かねえ」
「脅かしっこなしにしましょうぜ、組長さん。そんなら云うが、この薬の働きはねえ、人間の柔い皮膚を浸蝕する力がある」
「そうか、柔い皮膚を、抉りとるのだな」
「それ以上は、言えねえ」
「ンじゃ、先刻みせた注射器の底に残っていた茶色の附着物は、この薬じゃなかったかい」
「さァ、どうかね。これは元々茶褐色の液体なんだ。ほら、振ってみると、硝子のところに、茶っぽい色が見えるだろう」
「それとも、やっぱりあれは、血のあとか。いや大きに、御苦労だった。こいつは、少ないが、当座のお礼だ」


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