海野十三 『夜泣き鉄骨』 「栗原さん、俺が持ってゆくよ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『夜泣き鉄骨』

現代語化

「栗原さん、俺が持ってゆくよ」
「だッ、誰だ。お前は……」
「こいつは、横瀬といいましてネ」
「この栗原の遠縁なんです」
「何でお前を連れてきたんだ?」
「今お願いして、倉庫で、僕の部下として、働かせていただいてます。というのは、下町の薬屋で働いてたのが、クビになりましてナ、栗原のところに、転がり込んできたんです」
「ふーん、お前さん、薬屋だったのか?」
「薬屋だったんです」
「どうだろうな。俺はお前さんに、ちょっと頼みたいことがあるんだが」
「面倒なことでなければ、手伝いますよ」
「これ――」
「面倒なことじゃないよ。じゃ、栗原、お前の子分を、ちょっと借りたぜ」
「へえ、どうぞ」
「さあ、こっちへ、入らない?」
「はい――」
「俺は、ちょっと、お前さんに見てもらいたいものがあるんだ」
「俺に、分かるかな?」
「もの、これなんだ」
「このガラスでできたものは何ですか?」
「これは、注射器の一部ですよ」
「注射器? そうだろうな、俺も、そう思った。それで、何の注射器か、お前さんには分からないかい?」
「さあ――」
「注射器は分かるけど、先についてる針がないから、見当がつかない」
「じゃ、ここを見てくれ。この注射器の底に、うっすら茶色っぽいものがついてるけど、これは、何の薬かい?」
「うん、なんかついてるけど――」
「電灯はつかないのか?」
「生憎、この合宿じゃ、6時にならないと、つかないんだ。まだ30分も間があるよ」
「さあ、分かりませんね。こんなに少量じゃ見当がつかない。薬品のようでもあり、血痕のようでもあり……」
「もう一つ、見てもらいたいものがある」
「これは何ですか?」
「こんなもの、どこから持ってきたんです?」
「何に使う道具ですか?」
「一言で言うと――」
「子宮鏡という、産婦人科の道具だね」
「よし、わかった」
「いや、ご苦労だった」
「ところで、もう一つだけ、お前さんに見てもらいたいものがあるんだが」
「あるんなら、早く出しな」
「ここには、ないんだ。ちょっと、近くまで付き合ってくれ」
「どうぞ。ドッコイショ」
「響き」

原文 (会話文抽出)

「栗原さん、俺が持ってゆくよ」
「だッ、誰だ。手前は……」
「こいつは、横瀬といいましてネ」
「この栗原の遠縁のものです」
「何故ひっぱってきたんだ」
「いまお願いして、倉庫で、私の下を働かせて、いただいてるのです。というのは、下町の薬種屋で働いていたのが、馘首になりましてナ、栗原のところへ、転りこんできたのです」
「ふウん、お前さん、薬屋かア」
「薬屋だったんです」
「どうだろうな。わしは、お前さんに、ちょっと頼みたいことがあるんだが」
「骨の折れねえことなら、手伝いますよ」
「これッ――」
「骨は折れねえことだ。じゃ、栗原、お前の若い衆を、ちょいと借りたぜ」
「へえ、ようがす」
「さあ、こっちへ、入んねえ」
「はあ――」
「わしは、鳥渡、お前さんに、見て貰いてえものがあるんだ」
「俺に、判るかなァ」
「ものは、これなんだ」
「この硝子で出来たものはなんだね」
「これは、注射器の一部分ですよ」
「注射器? そうだろうな、わしも、そう思った。それで、何の注射器か、お前さんに判らないかい」
「さァ――」
「注射器は判るが、尖端についている針が無いから、見当がつかねえ」
「じゃ、此処んとこを見て呉れ。この注射器の底に、ほんのり茶っぽいものが附いているが、これは、なんて薬かい」
「うん、なんか附いてはいるが――」
「電灯は点きませんか」
「生憎、この合宿じゃ、六時にならないと、点かないんだ。まだ三十分も間があるよ」
「さあ、わかりませんね。こんなに分量が少くちゃ見当がつかない。薬品のようでもあり、血痕のようでもあり……」
「もう一つ、見て貰いたいものがある」
「これは何かね」
「こんなもの、どっから持って来たんです」
「何に使う品物かね」
「一口に云えば――」
「子宮鏡という、産婦人科の道具だね」
「よし、判った」
「いや、御苦労だった」
「ところで、もう一つだけ、お前さんに見て貰いたいものがあるんだが」
「あるんなら、早く出しなせえ」
「ここには、無いんだ。ちょっと、近所まで附合ってくれ」
「ようがす。ドッコイショ」
「ひびき」


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