GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『ネオン横丁殺人事件』
現代語化
「このピストルですね、オヤジを撃ったのは。さあ、見覚えがありませんね。こっちのライターは……おや、これは、あの人のだ」
「おみねさんが教えてくれたんだがね」
「まあ、もう白状しちゃったんですか。そいじゃ私が言うまでも、これは銀さんのよ」
「なに、銀さん」
「銀さんって誰?」
「おや、マダムは銀さんのだと言わなかったの、まあ悪いことをした。でも、こうなったらしょうがないわ、銀さんッて、マダムのいい人よ、木村銀太といって、ゲーリー・クーパーみたいな、のっぽさんよ」
「一平と、その銀太君とは、どっちが背が高いんですか」
「それはね」
「どっちもどっちののっぽですわ」
「銀太というのは、ここへもちょくちょく忍んで来るだろうね」
「私が、言い出しに使われてるのよ」
「いやその位で、ありがとう」
「いよいよ足りなかった最後の方程式が見つかったようだね、帆村君」
「そうですね」
「おみねと、その情夫の木村銀太との共謀なんだ。さっき一平が寝ていたと思ったのはあれは銀太なんだ。君が見た人影ってのもネ、ありゃ銀太なんだよ。こうなるとピストルも誰のものだか判ったもんじゃないよ。一平からピストルを盗むことだって出来る」
「僕はそうは思いませんね。今の話で、おみねと、こっちの寝床に忍び込んでいた情夫の銀太とが犯行に関係のないことが判ったんです」
「そりゃまた、どうして」
「おみねと銀太が一緒に寝ているところに、思いがけなくあのピストル音がしたので、二人はびっくりして急いで出たのですよ。銀太がいたら絡まれるから、おみねは銀太を逃がしたんです、銀太は裸の上に着物を着直して、いろんな持ち物を懐にねじ込んで逃げるうちに、あのライターを落としたんです。銀太が相当の距離を逃げた頃を見計らって、マダムのおみねが『人殺しッ』と怒鳴ったんです」
「すると、あのピストルは、誰が撃ったことになるんだい」
「調べてみなければわかりませんが、多分ネオン屋の一平が撃ったんでしょう。カフェ・オソメの女坂も怪しいですがね」
「そうかね。僕はさっき言ったように、情夫とおみねの実演だと思うよ。とにかく、他の連中の動静も多田刑事に調べにやったからもう直ぐ判るだろう」
「課長、女坂染吉は家に居ましたよ。昨夜12時から一歩も外へ出なかったそうです。腹が下ったとかで、夜通し女房に、腹をさすらせたり、足をもませたりしていたそうです」
「重宝な現場不在証明ができたものだな」
「ゆかりのことはH風呂に聞いて午前4時半まで、Nという男と滞在していたことが判りました。それから大久保一平、あのネオン屋ですね、あいつについちゃ意外なことがあるです」
「ほほう、どうしたというんだ」
「あいつの家を叩き起こしてみましたが、昨夜は夕方から出たっきり、朝方まで、とうとう帰って来なかったんです」
「それで……」
「それでこいつは怪しいと思って、帰りがけに淀橋署に、ちょっと寄って、偶然一平のことを聞いてみましたところ、意外にも一平は上野署に留置されていることが判ったんです」
「なんだ、一平は上野に放り込まれているって?」
「実は一平さん、昨夜12時頃から、山下の屋台の屋台にへばりついて、徳利を10何本とか倒して、くだを巻いたんだそうです。挙げ句の果て、午前2時近くになって、店をしまうから帰って来れと、屋台の親父が言うと、なにを生意気な、というので、屋台の屋台を揺さぶって、とうとうそいつを道路に、ぶっ倒しちゃったんです。そこで上野署へ一晩留置ということになったんですが、身柄は今朝5時半釈放されました」
「そうか、こいつはまた、素晴らしい現場不在証明だ。ねえ帆村君、あのピストルが屋根裏でズドンと鳴った頃には、一平の奴上野署の留置場で、シラミに噛まれていたらしいよ」
「……」
「それで多田君」
「木村銀太という男の行方を調べて欲しい。奴はマダムのおみねと共謀して大将の首を切ったらしいんだ。――さア、そこらで室調を、便利な階下へ移すことにしようじゃないか」
原文 (会話文抽出)
「あなたに、ちょいと見て貰いたいものがあるんだが、このピストルと、ライターに見覚えが無いですか」
「このピストルですね、オヤジを射ったのは。さあ、見覚えがありませんね。こっちのライターは……おや、これは、あの人のだ」
「おみねさんが教えてくれたんだがね」
「まあ、もう白状しちゃったんですか。そいじゃ私が言うまでも、これは銀さんのよ」
「なに、銀さん」
「銀さんって誰のことかい」
「おや、マダムは銀さんのだと言わなかったの、まァ悪いことをした。でも、こうなったらしょうがないわ、銀さんッて、マダムのいい人よ、木村銀太といって、ゲリー・クーパーみたいな、のっぽさんよ」
「一平と、その銀太君とは、どっちが背が高いんですか」
「それはね」
「どっちもどっちののっぽですわ」
「銀太というのは、ここへもちょくちょく忍んで来るだろうね」
「私が、いいだしにつかわれてるのよ」
「いやその位で、ありがとう」
「いよいよ足りなかった最後の方程式がみつかったようだね、帆村君」
「そうですね」
「おみねと、その情夫の木村銀太との共謀なんだ。さっき一平が寝ていたと思ったのはあれは銀太なんだ。君が見た人影ってのもネ、ありゃ銀太なんだよ。こうなるとピストルも誰のものだか判ったもんじゃないよ。一平からピストルを盗むことだって出来る」
「僕はそうは思いませんね。今の話で、おみねと、こっちの寝床に忍びこんでいた情夫の銀太とが犯行に関係のないということが判ったんです」
「そりゃまた、どうして」
「おみねと銀太が一緒に寝ているところに、思いがけなくあのピストルの音がしたので、二人は吃驚して遽てだしたのですよ。銀太が居てはかかり合いになるから、おみねは銀太を逃がしたのです、銀太は裸の上に着物を着直して、いろんな持ちものを懐にねじこんで逃げるうちに、あのライターを落としたんです。銀太が相当の道程を逃げたころを見はからって、マダムのおみねが『人殺しッ』と怒鳴ったんです」
「すると、あのピストルは、誰が射ったことになるんだい」
「調べてみなければわかりませんが、多分ネオン屋の一平が射ったんでしょう。カフェ・オソメの女坂も怪しいですがね」
「そうかね。僕はさっき言ったように、情夫とおみねの実演だと思うよ。とにかく、他の連中の動静も多田刑事に調べにやったからもう直ぐ判るだろう」
「課長、女坂染吉は家に居ましたよ。昨夜十二時から一歩も外へ出なかったそうです。腹が下ったとかで、夜っぴて女房に、腹をさすらせたり、足をもませたりしていたそうです」
「重宝な現場不在証明ができたものだな」
「ゆかりのことはH風呂にきいて午前四時半まで、Nという男と滞在していたことが判りました。それから大久保一平、あのネオン屋ですね、あいつについちゃ意外なことがあるです」
「ほほう、どうしたというんだ」
「あいつの家を叩きおこしてみましたが、昨夜は夕から出たっきり、朝方まで、とうとう帰って来なかったんです」
「それで……」
「それでこいつは怪しいと思って、帰りがけに淀橋署に、ちょっと寄って、偶然一平のことを聞いてみましたところ、意外にも一平は上野署に留置されていることが判ったんです」
「なんだ、一平は上野に抛りこまれているって?」
「実は一平さん、昨夜十二時ごろから、山下のおでん屋の屋台に噛りついて、徳利を十何本とか倒して、くだをまいたんだそうです。揚句の果、午前二時近くになって、店をしまうから帰って来れと、屋台の親爺が言うと、なにを生意気な、というので、おでん屋の屋台をゆすぶって、到頭そいつを往来に、ぶっ倒しちまったんです。そこで上野署へ一晩留置ということになったんですが、身柄は今朝五時半釈放されました」
「そうか、こいつは又、素晴らしい現場不在証明だ。ねえ帆村君、あのピストルが屋根裏でズドンと鳴った頃には、一平の奴上野署の豚箱のなかで、虱に噛まれていたらしいよ」
「……」
「それで多田君」
「木村銀太という男の行方をしらべて貰いたい。彼奴はマダムのおみねと共謀して大将の寝首を掻いたらしいんだ。――さア、そこらで室調を、便利な階下へうつすことにしようじゃないか」