海野十三 『空中墳墓』 「先生、東に何が見えましたか?」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『空中墳墓』

現代語化

「先生、東に何か見えましたか?」
「いや、見えねえ。宇宙船が越中島から飛び出したの何時何分だった?」
「中井が張り込んでた電話だと11時33分だって」
「もう18分も経ってる。――相良が宇宙船に乗っかったの本当だろ?」
「宇宙船係の特別職工が言ってるから間違いねえでしょう。相良一人乗り込んで試験してたのが、どういうわけか空に飛び出したんだって。職工は言ってます。相良が乗ってる時に機械が故障しちゃって飛び出したんだって」
「どっちでもいいや。会社は騒いでんのか?」
「大変なことらしいです。今まで秘密も秘密、超秘密にしてた宇宙船の建造のことですからね。重役は青くなって今も会議してて、会社の建造方針とか、相良技師長が苦労して設計した事情について、すぐに声明を発表する文章を作ってるみたいです」
「そうか。実は昨日も会社に忍び込んだんだけど、あの中までは結局入れなかったんだ。宇宙船だって気づかなかった」
「相良さん、どこに行こうとしてるんでしょう。会社では火星に行くためだって言ってますが」
「それはちょっと時間経ってみないとわからねえな。――根賀地。今日は絶対ピストルを離すんじゃねえぞ」

原文 (会話文抽出)

「先生、東に何が見えましたか?」
「いや見えない。宇宙艇が越中島を飛び出したのは何時何分だった?」
「張り込んでいた中井の電話では十一時三十三分だそうです」
「もう十八分経っている。――相良が宇宙艇にのりこんだのは本当だろうね」
「宇宙艇係の特別職工が言明したのだから間違いじゃないでしょう。相良一人が乗りこんで試験をしていたのが、どうした拍子にか空へ飛び出したというのです。職工は言っています。相良さんが乗りこんでいる内、機械が故障になって飛び出したのだと」
「そりゃどちらでもよい。会社はさわいでいるか」
「そりゃ大変なものだそうです。いままで秘密も秘密、大秘密にしてあった宇宙艇の建造のことですからね。重役は青くなって今も協議中ですが、会社の建造方針や、相良技師長苦心の設計事情について、直ちにステートメント発表の文案を起草中だそうです」
「そうか。実は昨夜も会社へしのび込んだのだが、あの中までは到頭入れなかったのだ。宇宙艇とまでは気がつかなかった」
「相良氏はどこへ行くつもりなのでしょう。会社では火星航路を開くためだったと言っていますが」
「そいつは今少したってみないと一寸わからない。――根賀地。今日は決っしてピストルを手離しちゃならぬぞ」


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