GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 海野十三 『空中墳墓』
現代語化
「やつはバカ力を持ってます。彼の腕に触るとしても、まるで工場のベルトに触れたように、嫌というほど跳ね返されるだけです」
「警察に頼ったらどうですか?」
「それも考えてないわけじゃないんです。先生。あの有名な事件の人物が20年後の今日、発見されたことがわかれば、かわいそうな松井田は警察官と新聞記者に殺到されて、あの男の頭はどうなるかわかりません。せっかくわかるはずの『松風号』の消息も絶えてしまうのは惜しいと思います。今は私たちの手でできるだけの事実を調べて、松井田の精神状態が回復してから、先生に真相を発表していただいても遅くはないでしょう」
「ごもっともです。ところで風間さんの遺族は今はどうしていらっしゃいますか?」
「実はそれも一つ困っている点なんです。ご存じかもしれませんが、あの事件からずっと風間夫人、すま子と言います、私が引き取って面倒を見ています。戸籍上も今は私の妻になっていますし、真弓という20になる娘もいるんです」
「なるほど、風間氏が生きていたら、たいへん面倒なことになりますね」
「そのことについては私はもう決心しています。でも風間は生きているのでしょうか。すま子には、まだ何も話してないんです」
「よく調べてみましょう。――それからもう一つ聞きたいのですが。あなたは『松風号』のどの部分をご設計ですか?」
「プロペラです」
「プロペラの試験は、一番調子がいいとほめられました。あの設計には1年かかりました」
「それで今は何のお仕事を?」
「今は航空研究所の依頼品を監修して組み立てているところです。何を作っているかはちょっと言えませんが、航空機であることは確かです」
原文 (会話文抽出)
「じゃ何故、彼の腕をとって、貴方のお家へ連れこまないのですか」
「あいつは馬鹿力を持っています。彼奴の腕にさわることができても、それこそ工場のベルトに触れでもしたかのようにイヤという程、跳返されるばかりです」
「官憲の手を借りてはどうです」
「それも考えないじゃありません。が、先生。あの有名な事件の人物が二十年後の今日、発見されたことがわかったが最後、可哀想な松井田は警官と新聞記者とに殺到されて、あの男の頭はどこまで変になるか知れないのです。折角判るべき松風号の消息までもが絶えてしまうのは惜しいと思います。今は私共の手で出来るだけの事実を調べた上、松井田の精神状態が恢復してから、先生に真相を発表していただいても遅くはないでしょう」
「ごもっともです。ところで風間さんの遺族は今どうしていられますかね」
「実はそれも一つ困っている点なのです。御承知かも知れませんが、あの事件からずっと風間夫人、すま子と言います、それを私が引きとって世話をしています。只今は戸籍面も私の妻になっていますし、真弓という二十になる娘もあるようなわけです」
「なるほど、風間氏が生きていたら、甚だ事面倒になるわけですな」
「そのことについては私はもう決心をしています。だが風間は生きていましょうか。すま子には、まだ何事も話をしていないのです」
「よく調べて見ましょう。――それからもう一つ伺いたいのです。あなたは松風号のどの部分を御設計でしたか」
「プロペラです」
「プロペラの試験は、一番調子がよいとほめられた位です。あの設計は丸一年かかりました」
「それで只今のお仕事は」
「今は航空研究所の依頼品を監督して組立中です。何ものであるかは一寸申上げられませんが、航空機であることはたしかです」