海野十三 『空中墳墓』 「昨日も御来訪下すったそうですが、生憎で失…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『空中墳墓』

現代語化

「昨日も来ていただいたそうですが、あいにく会えなくて失礼しました。……では用件をうかがいます」
「先生が、私が依頼した事件をとても手際よく、しかもわかりやすく解決してくれると評判を聞いて、楽しみに伺ったのですが……」
「それで――お知りになりたいことは?」
「はい。それは、今から20年前のことですが――先生もよくご存じかと思いますが――東京から無着陸世界一周飛行に出かけて消息不明になった『松風号』の最後を知りたいのです」
「え、『松風号』の最後ですか?」
「あれは東京から西に向かって飛び立ったあと、確かインドシナあたりまで飛んでいるのを目撃した人がいるようですが、それっきり消息が途絶えたんですよね。各新聞社がこぞって大規模な捜索隊を派遣して、モンゴル、新疆、チベット、インドをはじめ、北極まで探したんですけど、全く見つからなかったんですよね。海に墜落したんじゃないかと紫外線写真器で海の上をくまなく撮影したんですけど、それでもダメだったんですよね」
「ああ、先生はよく覚えていらっしゃるようですね。実は、私もあの事件に関わっていたもので……」
「そうでしたか。相良さんは『松風号』の設計者の一人だったんですよね」
「おや、もうご存知でしたか。それで私は必死に探したんですよ。自分でも捜索隊を結成して、インドの国境からゴビ砂漠にかけてを探しました。でも、何も見つかりませんでした。全く行方がわからない。これほど探しても見つからないってことは、『松風号』は空中で爆発して火の玉になって消えちゃったんじゃないか、とあり得ないことを考えてしまうほどでした」
「なるほど」
「ところが最近、すごい発見をしたんです――あの『松風号』で旅立った2人のうち、1人が……」
「1人が、この東京に戻ってきているのを、この私が見たんです!」
「それは見間違いではないですか?」
「いえ、どうして見間違いなんですか。仮にそれが彼の幽霊だったとしても、見間違いではないんです」

原文 (会話文抽出)

「昨日も御来訪下すったそうですが、生憎で失礼をいたしました。……では御用件というのを承りましょうか」
「私は、先生が、御依頼した事件につき、非常に迅速に、しかも結論を簡単明瞭に、探しだして下さるという評判を承って、大いに喜んで参ったような次第なのですが……」
「それで――お識りになりたい点というのは」
「ハイ。その、それは、今から二十年前のことになりますが――先生もよっく御記憶かと存じますが――東京を出発して無着陸世界一周飛行の途にのぼったまま行方不明となった松風号の最後を識りたいのです」
「なに、松風号の最後?」
「あれは東京からコースを西にとり、確かインドシナあたりまでは飛んでいるのを見かけた者があるが、それっきり消息を断ってしまった、というのでしたね。各新聞社の蹶起を先頭として続々大仕掛けの捜査隊が派遣せられ、凡そ一年半近くも蒙古、新疆、西蔵、印度を始め、北極の方まで探し廻ったが、皆目消息がしれなかった、というのでしたね。海中に墜落しているのじゃないかと紫外線写真器でありとあらゆる洋上で撮影をやってみたのだが、矢張り駄目だったというのでしたね」
「おお、先生はよく覚えていて下さいました。実は、私もあの事件に関係がある人間なので捜査に奔走しましたが……」
「そうでしたね。相良さんは、松風号の設計家の一人だったのですな」
「やあ、これまで御存知でしたか。それで私はどんなにか手を尽して探したことでしょう。私自身も探検隊を組織して印度の国境からゴビの沙漠へかけて探しにゆきました。結果は何等得るところなしでした。全く行方がわからない。これ程さがして知れないものなら、松風号は空中爆発でもして一団の火焔となって飛散したのじゃないか、と随分無理なことまで思いめぐらして見たものでした」
「なるほど」
「ところが最近、恐しい発見にぶつかりました――というのはあの松風号にのって出発した二人の内、一人の方が……」
「一人の方が、現にこの東京に帰ってきているのを、この私が見たのです!」
「それは人違いではないのですか」
「いえ、なんで人違いなもんですか。たといそれが彼の幽霊であったとしても、それは人違いではないのです」


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