海野十三 『壊れたバリコン』 「貴局ト通信ガ出来ルコトヲ甚ダシク喜ブモノ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『壊れたバリコン』

現代語化

「そちらと通信できて嬉しいです。今、とても危険な目に遭っています。こちらの信号は弱いですよね?」
「こちらの信号はR2(弱いですが辛うじて読めます)です。ただし不安定で、R1(弱すぎて判読不能)またはR3(弱いですが受信可能)の範囲に変動しています。救助の準備をしておきます。そちらの局名は?」
「局名はなし。日本人。仮設局です。こちらの局名は?所在地は?」
「局名はJIZZ。所在地は東京市。実験局。大学生Y――そちらの所在地と、危険のくわしい状況を教えてください」
「なんて幸運なんでしょう。嬉しいです。日本万歳。友よ、驚くべきことを報告します。記事が長くて、送信力が弱いんです。こちらは信じますか?」
「信じたいと思います。後から質問させてください。とにかく早く話してください」
「必ず信じてください。私は命をかけています。私は神戸造船所の電気技師、セントー・ハヤオです。今いる場所はN県北東部T山からK山脈に向かって中間地点です。7日前、8月31日に休暇を利用して、誰も登ったことのない山を横断しようと1人の案内人を連れて、N県A町を出発して登山を始めました。こちらの送信がわかるか?」
「了解しています。こちらはそちらから受信した通信文をもう一度送り返しましょうか?」
「必要ありません。友よ、9月4日にここを通りました。今回の目的は山岳地方の踏破でしたが、もう1つあります。私もラジオを趣味にしていて、自分で組み立てた『スーパーヘテロダイン』という機械をこの山に持ってきました。つまり、高山山頂でアメリカの放送がどの程度受信できるか試そうと思ったんです。こちらの送信がわかるか?」
「了解しています。続けてください」
「目的地に着いたところ、大きな驚きがありました。突然、銃を持った集団が行く手をふさぐように立っていたんです。彼らは変な格好をしていて、背丈ほどの草の中に潜んでいました。全身に毒草のようなものを付けて……?」
「大気中の電気が邪魔をしています。しばらく送信を中止してください。――大気の状態がよくなりました。全身に毒草のようなものを付けて、と言っていましたね」
「毒草のようなものを付けていたんですけど。こちらの送信がわかるか?」
「了解しています。続けてください」
「……その下に黄土色の軍服のようなものを着ていました。そして驚くことに、西洋人がたくさん混じっているのがわかりました。最初はどこの国のグループかわからなかったのですが、数日間観察したところ○国の人のようです。残りは日本人のような気がしましたが、後に日本人でないことがわかりました。こちらの送信がわかるか?」
「そうです。その集団は何をしていたか?」
「私がこれまで観察したところでは、明らかに軍事的施設を作っているようです。私は案内人と別々の小屋に閉じ込められました。私たちの私物は取り上げられました。私の部屋は倉庫の一部です。セメントの樽がたくさんあります。部屋の入り口の扉には小さな窓があって、金網が張られています。武装した監視人が見回りをしてきて、窓から私を覗いています。私はその窓から外を見てみると、傾斜した山腹が切り取られているのが見えました。その前には小屋があって、人々が行き来しています。物資倉庫であることがわかりました。2日前までは、リベットを打つ「ニューマチック」

原文 (会話文抽出)

「貴局ト通信ガ出来ルコトヲ甚ダシク喜ブモノナリ。予ハ今甚ダシキ危険ニ臨ミ居レリ。当方ノ信号ハ微弱ナリヤ?」
「貴局ノ信号ハR2(微弱ナレド辛ウジテ読ミ得ル程度ノ意)ナリ。但シ不安定ニシテR1(微弱ニ聞コエ判読不能ノ意)又ハR3(微弱ナレド受信可能ノ意)ノ範囲ニ変動スルヲ認ム。危険救助取ハカラウベシ。貴局名如何」
「当方局名ナシ。日本人。仮設局ナリ。貴局名如何。貴局所在如何」
「当方局名JIZZ。所在東京市。実験局。W大学生Y――貴局所在、及ビ危険詳細知ラセ」
「天祐。喜ビ甚ダシ。日本万歳。愛スル友ヨ。予ハ貴局ニ驚クベキ報道ヲセムトス。記事甚ダ長ク、送信力甚ダ短シ。貴局ハ予ノ報道ヲ信ズルヤ」
「信ジタク思ウ。予モ亦後ニ質問スベシ。兎モ角モ早ク語レ」
「必ズ信ゼヨ。予ハ決死的ナリ。予ハ神戸K造船所電気課員、セントー・ハヤオ。只今ノ所在ハN県東北部T山ヲK山脈ヘ向ウ中間ノ地点ニ在リ。予ハ今ヨリ七日前、スナワチ八月三十一日、休暇ヲ利用シ、前人未踏ノ山岳地方ヲ横断セントシテ強力一人ヲ連レN県A町ヲ後ニ登山ヲ開始セリ。貴局ハ当方ノ送信ヲ了解セラルルヤ」
「予ハ了解セリ。予ハ貴局ヨリノ受信シタル通信文ヲ逆ニ送信スベキヤ」
「ソノ必要ナシ。愛スル友ヨ。予等ハ九月四日只今ノ地点ニ通リカカリタリ。今回ノ予ノ目的ハ山岳地方跋渉ニ在ルト共ニ、尚一ツノ目的アリ。予モ亦ラジオヲ以テ長年ノ趣味トスルモノニシテ、予ガ組立テタル愛機『スーパーヘテロダイン』ヲ携エテ今回此途ニノボレリ。スナワチ、高山山巓ニ於テ、米国ノ放送ヲ如何ナル程度ニ受信シ得ラルルカヲ試ミンガタメナリキ。貴局ハ当方ノ送信ヲ了解セラルルヤ」
「予ハ了解セリ。後ヲ語レ」
「予等ハ栽点ニ通リカカルヤ、一大驚異ヲ発見セリ。突然予等ノ行手ニ銃ヲ擬シテ立チ防ガリタル一団アリ。彼等ハ異様ノ風体ヲナシ身ノ丈程ノ雑草中ニ潜ミ居リシモノナリ。全身ニ毒草ノヨウナモノヲツケタルモ、……」
「空電妨害ニ悩サル。貴局ノ送信ヲシバラク中止セヨ。――空中状態ヨロシ。全身ニ毒草ノヨウナモノヲツケタルモ以下語レ」
「毒草ノヨウナモノヲツケタルモ。貴局ハ当方ノ送信ヲ了解セラルルヤ」
「予ハ了解セリ。後ヲ語レ」
「……ソノ下ニハ浅黄色ノ軍服ラシキモノヲ着セリ。而シテ驚クベキコトハ、彼等ノ中ニハ西洋人多ク混ジ居ルヲ認メタリ。其時ハ何処ノ国籍ニ属スルヤ全ク不明ナリシガ只今マデ数日間観察セルトコロニヨレバ○国人ナルモノノ如シ。他ハ日本人ナルカト思イタレドモ、後ニ至リテ彼等ハ日本人ニハ非ザルモノノ如キコト判明セリ。貴局ハ引続キ当方ノ送信ヲ了解セラルルヤ」
「然リ。其ノ一団ハ何ヲナセルヤ」
「予ノ今日マデノ観察ニヨレバ、明カニ軍事的施設ヲ作リツツアルモノノ如シ。予ハ彼等ノ小屋ノ一室ニ予ノ案内人ト別ノ室ニ幽閉セラレタリ。予等ノ所持品ハ没収サレタリ。予ノ室ハ倉庫ノ一部ナリ。セメント樽多シ。予ノ室ノ入口ノ扉ニ小サキ窓アリテ金網ヲ張ル。武装セル監視人巡回シ来リ其ノ窓ヨリ予ヲ窺ウ。予ハ其ノ小窓ヨリ窓外ヲ見タルトコロ傾斜セル山腹ガ截リトラレアルヲ見タリ。其ノ前ニ小屋アリテ人々出入ス。雑品倉庫ナルコトヲ知リ得タリ。一昨日マデハ、リベットヲ打ツ「ニュウマチック」
「コンクリート」


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