海野十三 『電気風呂の怪死事件』 「今、変だこと! って云ったじゃないか?」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 海野十三 『電気風呂の怪死事件』

現代語化

「今の変なことって、さっき言ってたアレのこと?」
「うん、でもそれは――」
「あのね、さっき男湯で死んだお客さんの体が見つかった時に、私の目の前にあったでしょ。それで私、ビックリしちゃって奥に逃げようとしたの。そしたらちょうどその時に、裸の女の人とぶつかったんです。思わず、ダメですよ、早く戻ってください――って私が言うと、その人は女湯の方に帰っていったんですけど、その時もしかしたらと思ったんで、私は、女湯の方は何ともないですか?って聞いたんです。そしたら、何もありません、って言って、そのままこっちに来たはずなのに――それで、今思い出したもんだから、つい口に出ちゃったんです」
「なるほど、じゃあ君が見た女の人って、この死んでる女の人じゃないのか? よく見てごらん!」
「うーん、全然違いますね。暗かったのと興奮してたんでハッキリとは見えなかったけど、私が見た人は髪が縛ってあったような気がします。でもこのお亡くなりになった方は日本髪だし――でも、体型とかは似てるような気も……」

原文 (会話文抽出)

「今、変だこと! って云ったじゃないか?」
「ええ、でもそれは――」
「いえね、先刻男湯で沈んだお客の体が見つかったとき、それがわたしの鼻の先なんでしょ。わたし、びっくりしちゃって奥へ逃げ出そうとしたんです。すると、ちょうどその時、女の人が一人、裸のまんま、わたしと衝突ったんです。思わず、いけません、早くお帰んなさい――って、わたしが云いますと、その方、この女湯の方へ帰ってしまいましたが、その時もしやと思ったもんですから、私は、女湯の方は何ともありませんか、って訊ねましたんです。すると、いいえ、何事もありません、と云って、そのまま此方へ来た筈なんですのに――それで、今思い出したもんですから、ひょいと呟いたんですわ」
「ほほう、では君の見たという女は、此の死んでいる女客じゃなかったかね? よく見て御覧!」
「いえ、全っきり異ってますわ。何しろうす暗いのと、上気していたのとで、はっきり見ることも出来ませんでしたが、わたしの見た女の方は束髪だった様に覚えています。此のお客さんは銀杏返しですものね、――ですけど、肉附きや、体の恰好など、似ていたと思えばそんな気もしますけれど……」


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