岡本綺堂 『半七捕物帳』 「あの団扇ですかえ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「あの団扇ですか?」
「いいえ、あの団扇の隣にかかってるのは……。あれは何ですか? 絵草紙のようですけど」
「うちの子供の絵草紙です」
「ちょっと持ってみてくれませんか?」
「絵草紙を何に使うんですか?」
「どうしてもいい、用があるから見せてって言ってるでしょ?」
「しつこいようなら、私が行って取ってくる」
「あなた。人の家にあからさまに上がり込んで、何をするつもりですか?」
「さっき聞いてると、うちの子供の絵草紙って言ったよね。嘘つきめ。この家にどんな子供がいますか? 猫の子一匹もいないじゃないか。60いくつにもなる耳の悪い婆さんとあなた2人きりだって、近所で聞いて知ってるんだぞ。第一、この絵草紙の表紙には何て書いてある? 『庚戌、正月、なお……』この『なお』って誰の名前だ? 世間には同じ名前もあるだろうけど、ここでこの絵草紙が見つかった以上は言い逃れはさせない。甲州屋の娘の手習い用の絵草紙がどうしてここに飾ってあるんだ? 詳しく話せ。わけを話せ」
「婆さんはどこへ行ったんだ?」
「近所に買い物に出かけています」
「それなら2階へ案内しろ」

原文 (会話文抽出)

「あの団扇ですかえ」
「いいえ、あの団扇の隣りに懸かっているのは……。あれはなんですえ。お草紙のようですね」
「うちの子供のお草紙です」
「ちょいと持って来て、見せてくれませんか」
「お草紙をどうするんですよ」
「どうしてもいい、用があるから見せろと云うんだ」
「強情を張っていると、おれが行って取ってくる」
「おまえさん。人の家へむやみにはいって来て、どうするんですよ」
「今聞いていれば、うちの子供のお草紙だと云ったな。嘘つき阿魔め。ここの家にどんな子がいる。猫の子一匹もいねえじゃあねえか。六十幾つになるつんぼの婆さんとおめえの二人っきりだということは近所で訊いて知っているぞ。第一この草紙の表紙になんと書いてある。庚戌、正月、なお……このなおというのはだれの名だ。世間におなじ名はあっても、ここでこの草紙を見つけた以上は云い抜けはさせねえ。甲州屋のむすめの手習い草紙がどうしてここに懸けてあるんだ。仔細をいえ。わけを云え」
「婆はどこへ行った」
「近所へ買物に出ました」
「そんなら二階へ案内しろ」


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