岡本綺堂 『半七捕物帳』 「そうすると、おまえさんは病気のよくなり次…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「そうすると、あなたは病気になったら越ヶ谷とかに行くつもりですか?」
「はい。とにかく、気分転換に一度は行ってみたいと思っています」
「きっと行きますか?」
「はい」
「やめなさいよ。無駄足です。旅費を使うだけ損です」
「そうでしょうか?」
「首をかしげることはありません。行くくらいの気があるなら、今朝どうしてすぐに出発しなかったのですか?」
「仮病を使って、家の2階でのんびりしているんじゃないですか?さっさと飛び起きて、草履を履く準備をしなさいよ」
「いえ、決して仮病ではなく……。さっきも申し上げた通り、どうも寝冷えをしたようで、夜明け頃から頭痛がして……」
「頭痛の理由は別にありますよ。倉田屋の姉娘を呼んで来てもらって看病してもらったらどうですか?」
「あなたは妹を使者にしているでしょう。倉田屋の娘と手紙のやりとりを」
「倉田屋の娘もまた自分の妹を使者にしてます。どちらの妹も稽古仲間だから、それは本当に都合がいいわけですよ。この家の妹が昨日雷師匠に怒られたのは、清書が下手だからではありません。稽古場で手紙を落としたからです。男なのか女なのか知りませんけど、それを向こうに渡そうとしたのか、それとも向こうから受け取ったのか、どちらにしろあなたと倉田屋の姉娘とは関係を持っています。さあ、今更になってまでも隠し続けるのはよくありません。親たちに心配をかけ、家族全員を騒がせて、あなたが仮病を使って平気で寝ているなんて許されませんよ。いや、仮病なのはわかってる。越ヶ谷に行っても無駄だと百も承知だから、頭痛だの、尻が痒いだのと言って、少しごまかしているのです。あなたの顔色が悪いのは病気ではありません。別の心配事があるからです。ぼんやりしている倉田屋の妹娘を引きずり出して、頭を叩いて尋問すればすべてがわかるでしょう。でも、そんなことはしたくないから、こうしてひざをついてあなたに聞くんですよ。一体あなたたちは今までどこで会っていたのですか?遠くはないでしょう。真っ先にそれを教えてください」

原文 (会話文抽出)

「そうすると、おまえさんは病気のよくなり次第に、越ヶ谷とかへ行くつもりですかえ」
「はい。ともかくも念晴らしに一度は行って来たいと思って居ります」
「きっと出かけますかえ」
「はい」
「およしなせえ、くたびれ儲けだ。路用をつかうだけ無駄なことだ」
「そうでございましょうか」
「なにも首をひねることはねえ。出かけるくらいなら、今朝なぜ直ぐに出て行きなさらねえ」
「仮病をつかって、家の二階にごろごろしていることはねえ。さっさと飛び起きて、草鞋をはく支度をするがいいじゃあねえか」
「いえ、決して仮病では……。唯今も申す通り、どうも寝冷えをいたしたとみえて、暁方から頭が痛みまして……」
「あたまの痛てえのはほかに訳があるだろう。倉田屋の姉娘を呼んで来て看病して貰っちゃあどうだね」
「おまえさんは妹を使にして、倉田屋の娘と文のやりとりをしているだろう」
「倉田屋の娘もやっぱり自分の妹を使にしている。どっちの妹も稽古朋輩だから、それはまことに都合がいいわけだ。ここの妹がきのう雷師匠に嚇かされたのは、清書が不出来のせいじゃあねえ。稽古場で手紙を落としたからだ。男のか女のか知らねえが、それを向うへ渡そうとするのか、それとも向うから受け取ったか、どっちにしてもお前さんと倉田屋の姉娘とは係り合いを逃がれられねえ。さあ、今更となっていつまでも隠し立てをしているのは、よくねえことだ。親たちに苦労をかけ、家じゅうの者をさわがして、お前さんが仮病をつかって平気で寝てもいられめえじゃあねえか。いや、仮病はわかっている。どうで越ヶ谷へ行っても無駄だということを百も承知しているから、頭が痛えの、尻が痒いのと云って、一寸逃がれをしているのだ。おまえさんの顔の色の悪いのは病気じゃあねえ。ほかに苦労があるからだ。薄ぼんやりしている倉田屋の妹娘を引っ張り出して、あたまから嚇かして詮議すれば何もかも判ることだが、そんなことはしたくねえから、それでこうして膝組みでおまえさんに訊くんだ。一体おまえさん達は今までどこで逢っていたんだ。どうで遠いところじゃあるめえ。真っ先にそれを教せえて貰おうじゃあねえか」


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