岡本綺堂 『半七捕物帳』 「ねえ、魚虎の帳面をみると、仕出しが時々に…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「なあ、魚虎の帳簿を見ると、仕出しがよくあるんだ。あれは木場の旦那だろう」
「それはわかってるけど、もう一人客がいるんだ。その客は4、5日くらい途切れてまた来ることがある。昨日は来たんだ」
「それで、夕方に出かけて、夜中に帰って来たのか? それとも朝になって帰ってきたのか? 生魚をむさぼり食って、骨を庭先にポイ捨てされると困るんだよな」
「ねえ、ほんと困るよね」
「あんな仙人なのか乞食なのか山男なのかわかんない客がいきなり来ちゃって、まったく家族はたまったもんじゃない。あの人って誰なんだ? うちの親戚か?」
「知りません」
「名前はなんだっけ?」
「知りません」
「たまに来るのか、ずっと来てるのか?」
「知りません」
「嘘つけ」
「この家に住み込みで働いてるくせに、それを知らないわけないでしょ。ほんとに来ないなら、最初から「そんな人は来ません」って言えばいいじゃない。家の親戚かと聞かれても知らないって言う。名前を聞かれても知らないって言う。でも実際に来てた証拠があるんだ。さあ、隠さずに教えなさい。お前いくつだ?」
「18です」
「よし、ちょっと調べたいことがある。俺と一緒に番屋に来い」
「番屋に連れて行くのはかわいそうだ。魚虎まで来い」

原文 (会話文抽出)

「ねえ、魚虎の帳面をみると、仕出しが時々にある。それは木場の旦那のだろう」
「それは判っているが、もうひとりのお客様だ。そのお客は四、五日ぐらい途切れて又来ることがある。きのうは来たんだね」
「そうして、日の暮れから出て行って、夜なかに帰って来たかえ。それとも今朝になって帰って来たかえ。なにしろ生魚をむしゃむしゃ食って、その骨を庭のさきなんぞへむやみに捨てられちゃあ困るね」
「ねえ、まったく困るだろう」
「あんな仙人だか乞食だか山男だか判らねえお客様に舞い込まれちゃあ、まったく家の者泣かせよ。あの人はなんだえ。うちの親類かえ」
「知りません」
「名はなんというんだえ」
「知りません」
「時々に来るのかえ、始終来ているのかえ」
「知りません」
「嘘をつけ」
「あすこの家に奉公していながら、それを知らねえという理窟があるか。まったく来ねえものなら、初めからそんな人は来ませんとなぜ云わねえ。家の親類かと訊けば、知らねえという。名はなんというと訊けば、知らねえという。それが確かに来ている証拠だ。さあ、隠さずに云え。おまえはいくつだ」
「十八です」
「よし、少しおしらべの筋がある。おれと一緒に番屋へ来い」
「番屋へ連れて行くのも可哀そうだ。魚虎まで来い」


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