岡本綺堂 『半七捕物帳』 「しようがねえな」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「しょうがないな」
「親分さん。おはようございます」
「おう、清公。どこへ行くんだい?」
「お前の家へ行こうとしてたところだ……。都合よく会ったな」
「実はな、ここんとこ毎日天気が悪くて、商売も暇だから、昨日のお昼過ぎに小梅の友達んちに遊びに行ってきたんだ。すると、その途中で女に会ったんだよ。その女は近所の銭湯からでも帰ってきたみたいで、風呂道具を持って蛇の目の傘をさして歩いてる。なんだか見覚えのあるような女だなと思って、すれ違いざまに傘の中を覗いてみたら、それがな、親分さん。あれ、あの時の潮干狩りの時の女なんですよ」
「こいつ、見逃しちゃいけねぇと思ったから、俺はそっとその女の後をつけていったんだ。そしたら小半町くらい行ったところに瓦屋があって。その隣の生垣のある家に入ったのをちゃんと見たから、それとなく近所で聞いてみると、その女はおとわって言って深川辺の旦那がいるんだそうだ。なるほど、庭の手入れとかも行き届いてて、割と裕福に暮らしてるみたいだったよ」
「そうか」
「それはご苦労さん、よく頑張ってくれた。その女は30歳くらいだったっけ?」
「ぱっと見は27、8歳ってとこだけど、もう30か。もしかしたらひとつかふたつはサバ読んでるかもしれない。小股が切れてて感じのいい女で、生まれは堅気じゃないな」
「わかった。わかった。悪天候の中よく知らせてくれた。後で礼をするよ」

原文 (会話文抽出)

「しようがねえな」
「親分さん。お早うございます」
「やあ、清公。どこへ行く」
「おまえさんの家へ……。丁度いいところで逢いました」
「実はね、このごろは毎日天気が悪いので、商売の方もあんまり忙がしくないもんですから、きのうの午すぎに小梅の友達のところへ遊びに出かけました。すると、その途中でひとりの女に逢ったんですよ。その女は近所の湯からでも帰って来たとみえて、七つ道具を持って蛇の目の傘をさしてくる。どうも見おぼえのあるような女だと思って、すれちがいながら傘のなかを覗いてみると、それがね、親分さん。それ、いつかの潮干の時の女なんですよ」
「こいつ、見逃がしちゃあいけねえと思ったから、わっしはそっとその女のあとをつけて行くと、それから小半町ばかり行ったところに瓦屋がある。そのとなりの生垣のある家へはいったのを確かに見とどけたから、それとなく近所で訊いてみると、その女はおとわといって深川辺の旦那を持っているんだそうです。なるほど、庭の手入れなんぞもよく行きとどいていて、ちょいと小綺麗に暮らしているようでした」
「そうか」
「それは御苦労、よく働いてくれた。その女は三十ぐらいだと云ったっけな」
「ちょいと見ると、二十七八ぐらいには化かすんだけれど、もう三十か、ひょっとすると一つや二つは面を出しているかも知れません。小股の切れあがった、垢ぬけのした女で、生まれは堅気じゃありませんね」
「判った。わかった。路の悪いのによく知らせに来てくれた。いずれお礼をするよ」


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