夏目漱石 『趣味の遺伝』 「近世の軍略において、攻城は至難なるものの…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『趣味の遺伝』

現代語化

「戦争って、一番キツいのは城攻めなんだ。俺らも死んじゃったやつばっかで、この数ヶ月で仲良かった将校もいなくなっちゃった。俺もやられちまうかもしれねえ。「お前もすぐ死ぬよ」って、毎晩大砲の音聞いてるといつもそう思うんだよ」
「もう明日には死ぬかもな」
「俺ら軍人は戦争で死ぬのが仕事だ。死ぬのはカッコいいことなんだ。生き残って帰国するほうが、死に損なったみたいでイヤっちゅうか」
「もう今日で終わりかも。二龍山をぶっ壊してる大砲がうるせえ。死んだらもうこんな音も聞こえなくなるんだろうな。耳はダメになるけど、誰かが墓参りして、白い菊でもお供えしてくれるのかな。寂光院って静かでいいところだ」
「風強いな。そろそろ死ぬときが来たみたいだ。当たっても旗振って突っ込むけど、おふくろは寒がってるかな」

原文 (会話文抽出)

「近世の軍略において、攻城は至難なるものの一として数えらる。我が攻囲軍の死傷多きは怪しむに足らず。この二三ヶ月間に余が知れる将校の城下に斃れたる者は枚挙に遑あらず。死は早晩余を襲い来らん。余は日夜に両軍の砲撃を聞きて、今か今かと順番の至るを待つ」
「余の運命もいよいよ明日に逼った」
「軍人が軍さで死ぬのは当然の事である。死ぬのは名誉である。ある点から云えば生きて本国に帰るのは死ぬべきところを死に損なったようなものだ」
「今日限りの命だ。二竜山を崩す大砲の声がしきりに響く。死んだらあの音も聞えぬだろう。耳は聞えなくなっても、誰か来て墓参りをしてくれるだろう。そうして白い小さい菊でもあげてくれるだろう。寂光院は閑静な所だ」
「強い風だ。いよいよこれから死にに行く。丸に中って仆れるまで旗を振って進むつもりだ。御母さんは、寒いだろう」


青空文庫現代語化 Home リスト