GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『鼠小僧次郎吉』
現代語化
「なんだって。俺が鼠小僧じゃないって?あんたよく知ってるね。そうやって旦那旦那って持ち上げてれば――」
「ま、そういう屁理屈こねたいなら、ここにいる馬子とか若い衆が、ちょうどいい相手になるよ。でもそれだってたった今までやったら、もう飽きただろ。第一お前が紛れもない日本一の大泥棒なら、わざわざペラペラとくだらない昔の悪事を並べるわけないだろ。だからさ、黙って話を聞こうぜ。お前がいくら鼠小僧だって言い張ったって、役人始め本当に鼠小僧だって思うかもしれない。でも、そうなったら獄門か磔は免れないぜ。それでもお前は鼠小僧って言えるのか」
「はい、その時はもうどうにもできません。実は鼠小僧でも何もじゃなくて、ただのゴマの蝿なんです」
「そうだろう。そうじゃないとおかしいもんな。でも火付けや押し込みまでさんざんしたって言うんだから、お前もなかなか悪党だな。どうせ牢屋には行くことになるだろう」
原文 (会話文抽出)
「おい、越後屋さん。いやさ、重吉さん。つまら無え冗談は云は無えものだ。御前が鼠小僧だなどと云ふと、人の好い田舎者は本当にするぜ。それぢや割が悪からうが。」
「何だと。おれが鼠小僧ぢや無え? 飛んだ御前は物知りだの。かう、旦那旦那と立ててゐりや――」
「これさ。そんな啖呵が切りたけりや、此処にゐる馬子や若え衆が、丁度御前にや好い相手だ。だがそれもさつきからぢや、もう大抵切り飽きたらう。第一御前が紛れも無え日本一の大泥坊なら、何もすき好んでべらべらと、為にもなら無え旧悪を並べ立てる筈が無えわな。これさ、まあ黙つて聞きねえと云ふ事に。そりや御前が何でも彼でも、鼠小僧だと剛情を張りや、役人始め真実御前が鼠小僧だと思ふかも知れ無え。が、その時にや軽くて獄門、重くて磔は逃れ無えぜ。それでも御前は鼠小僧か、――と云はれたら、どうする気だ。」
「へい、何とも申し訳はござりやせん。実は鼠小僧でも何でも無え、唯の胡麻の蠅でござりやす。」
「さうだらう。さうなくつちや、なら無え筈だ。だが火つけや押込みまでさんざんしたと云ふからにや、御前も好い悪党だ。どうせ笠の台は飛ぶだらうぜ。」