GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「そんなにやばくねえって」
「でも稽古また休むんでしょ。さっきお母さんがそう言ってた」
「頭が重くてさ」
「だから薬飲みなよ。初日まで急に悪くなったら大変だよ」
「悪くなったら休むよ。どうせ今回の芝居乗り気じゃないし、どうでもいいや。むしろ休みたいくらい」
「あれ、鳥の影が……。誰か来るのかな」
「誰か来るって言うと、舞台の方から誰か来なかった?」
「うん、今日はまだ誰も……」
「定さんによると、今回はあんた役に合ってないんだって?」
「役不足っつうわけじゃないけど」
「旅公演ならともかく、江戸の芝居で、あんたに判官と弥五郎やらせてくれるんだもん。役不足どころか、ありがてえ話だろ。でも、どうもやる気でない。さっきも言ったけど、今回の芝居は休もうかなって」
「なんで?」
「あたし、あんたの判官見たいよ。出番少ないけどね」
「もちろんだよ。でも師直が気に食わねえ。こっちが判官で、あいつに怒鳴られるのはイヤだ」
「忠臣蔵」
原文 (会話文抽出)
「ほんとうに気分が悪いの。振出しでも買って来てあげましょうか」
「なに、それ程でもないのさ」
「でも、きょうもまた稽古を休むんでしょう。阿母さんがさっきそんなことを云っていました」
「なにしろ、頭が重いから」
「だからお薬をおのみなさいよ。初日前にどっと悪くなると大変だわ」
「悪くなれば休む分のことさ。今度の芝居はあまり気が進まないんだから、どうでもいい。いっそ休む方がいいかも知れない」
「おや、鳥影が……。誰か来るかしら」
「誰か来るといえば、芝居の方から誰も来なかったかしら」
「いいえ、きょうはまだ誰も……」
「定さんの話に、おまえさんは今度は役不足だというじゃありませんか」
「役不足という訳じゃあない」
「旅へ出てならともかくも、江戸の芝居で、わたしに判官と弥五郎を使わせてくれる。役不足どころか、有難い位のものさ。だが、どうも気が乗らない。今もいう通り、今度の芝居はいっそ休もうかとも思っているんだ」
「なぜ」
「あたし、おまえさんの判官がみたいわ。出使いでしょう」
「無論さ。だが、師直が気にくわない。こっちが判官で、あいつに窘められるかと思うと忌になる」
「忠臣蔵」