GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『琴のそら音』
現代語化
「所天は黒木軍に従軍してるけど、この方はどうやら怪我もしないで済んだみたい」
「奥さんが亡くなったって知らせを受けたらさぞ驚いただろう」
「いや、それについて不思議なことなんだけど、日本から手紙が届く前に奥さんが旦那さんのところに行ってたんだ」
「行ってるって?」
「会いに行ってたんだ」
「どうして?」
「どうしてって、会いに行ったんだって」
「会いに行くにも何にも、当人死んでるんじゃないか?」
「死んで会いに行ったんだ」
「ばかなこと言うなよ。いくら旦那さんが恋しくったって、そんなことができるわけがないだろ。まるで林屋正三の怪談みたいじゃないか」
「いや、実際に行ったんだから仕方ない」
「仕方ないって――何だか見てきたようなことを言うなよ。変だな、お前本当にそんなことを話してるのか?」
「もちろん本当だよ」
「こりゃびっくりした。まるでうちの婆さんみたいだ」
「婆さんでも爺さんでも事実だから仕方がない」
原文 (会話文抽出)
「それでその所天の方は無事なのかね」
「所天は黒木軍についているんだが、この方はまあ幸に怪我もしないようだ」
「細君が死んだと云う報知を受取ったらさぞ驚いたろう」
「いや、それについて不思議な話があるんだがね、日本から手紙の届かない先に細君がちゃんと亭主の所へ行っているんだ」
「行ってるとは?」
「逢いに行ってるんだ」
「どうして?」
「どうしてって、逢いに行ったのさ」
「逢いに行くにも何にも当人死んでるんじゃないか」
「死んで逢いに行ったのさ」
「馬鹿あ云ってら、いくら亭主が恋しいったって、そんな芸が誰に出来るもんか。まるで林屋正三の怪談だ」
「いや実際行ったんだから、しようがない」
「しようがないって――何だか見て来たような事を云うぜ。おかしいな、君本当にそんな事を話してるのかい」
「無論本当さ」
「こりゃ驚いた。まるで僕のうちの婆さんのようだ」
「婆さんでも爺さんでも事実だから仕方がない」