森鴎外 『寒山拾得』 「拾得という僧はまだ当寺におられますか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 森鴎外 『寒山拾得』

現代語化

「拾得さんはまだこのお寺にいらっしゃいますか?」
「よくご存じで。先刻あちらの台所で、寒山って人と火にあたってましたんで、用事があるようなら、呼んできますか?」
「ははぁ。寒山さんも来ていますか。それは願ってもないです。お手数ですが台所まで案内してください」
「承知しました」
「拾得さんはいつ頃からこのお寺にいますか?」
「もうだいぶ前になります。あの松林の中から豊干さんが拾って帰ってきた捨て子です」
「へぇ。それでこのお寺では何をしてるんですか?」
「拾われて来てから3年ほど経った頃、食堂で上座の像にお香をあげたり、明かりをつけたり、そのほかお供え物をしたりしてました。そのうちに上座の像にお食事を供えておいて、自分が向かい合って一緒に食べてるのを見つけられたそうです。賓頭盧尊者の像がどれだけ尊いものか知らなかったみたいですね。今は台所で僧侶たちの食器を洗わせてます」
「へぇ」
「それからさっき寒山と言いましたが、それはどういう方ですか?」
「寒山ですか。これはこのお寺から西側の寒巌という石窟に住んでる人です。拾得が食器を洗うとき、残ったご飯やおかずを竹の筒に入れて取っておくと、寒山がそれを貰いに来ます」
「なるほど」

原文 (会話文抽出)

「拾得という僧はまだ当寺におられますか」
「よくご存じでございます。先刻あちらの厨で、寒山と申すものと火に当っておりましたから、ご用がおありなさるなら、呼び寄せましょうか」
「ははあ。寒山も来ておられますか。それは願ってもないことです。どうぞご苦労ついでに厨にご案内を願いましょう」
「承知いたしました」
「拾得さんはいつごろから当寺におられますか」
「もうよほど久しいことでございます。あれは豊干さんが松林の中から拾って帰られた捨て子でございます」
「はあ。そして当寺では何をしておられますか」
「拾われて参ってから三年ほど立ちましたとき、食堂で上座の像に香を上げたり、燈明を上げたり、そのほか供えものをさせたりいたしましたそうでございます。そのうちある日上座の像に食事を供えておいて、自分が向き合って一しょに食べているのを見つけられましたそうでございます。賓頭盧尊者の像がどれだけ尊いものか存ぜずにいたしたことと見えます。唯今では厨で僧どもの食器を洗わせております」
「はあ」
「それから唯今寒山とおっしゃったが、それはどういう方ですか」
「寒山でございますか。これは当寺から西の方の寒巌と申す石窟に住んでおりますものでございます。拾得が食器を滌いますとき、残っている飯や菜を竹の筒に入れて取っておきますと、寒山はそれをもらいに参るのでございます」
「なるほど」


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