岡本綺堂 『半七捕物帳』 「そこで親分。おまえさんはほんとうに遊びで…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「それでおやっさん。お前さん、本当に遊びですか?もしかして今の一件が江戸にも伝わって、その様子を見に来たんじゃないですか?」
「はは、さすが目は利いてるな。実はそれなんだ」
「いや、ありがたい。お前さんが来てくれたら千人力だ」
「実は俺も困ってるんだ。親分、どうかいい知恵を授けてください」
「いい知恵と言ってもな、江戸から狙いをつけて乗り込んできた以上、手ぶらでは引き返せないよ。そこで、三五郎。最近どこの外国人館で物が盗られたってことはないか?」
「そうですね」
「盗まれた奴はたくさんいるけど、どれもこれもこっちらの人間ばかりで、外国人館に押し入った泥棒はいないみたいですね」
「他に外国人館から何か訴えがあったりしませんか?」
「別に特別なことではありませんが、確か先月だったと思います。イギリスのトムソン商館から奉行所にこんなことを内々で頼んできましたよ。自分の家で使ってるロイドという若い番頭が、去年の夏頃から港崎町の岩亀にやたら遊びに行って、ずいぶん派手に金を使ってるらしいけど、商館で渡す給料だけじゃとても賄えない。かといって、当人は他に大金を持ってるようにも見えないから、その金の出所がどうも怪しい。もしかして商館の帳簿を誤魔化して、裏で商売でもしてるんじゃないかと、主人側でもいろいろ調べてるけど、どうせ日本人を相手に商売したんだろうから、そちらの奉行所でも内々で調査してくださいと、こう言ったんです。そこで俺も調べてみたら、どうやらそのロイドって奴は岩亀の夕顔って女に惚れ込んで、金を使ってるらしいんです」
「そのロイドってのはどんな奴だ?」
「イギリスのロンドン生まれで、年は27だそうですが、日本語もちょっと話せるし、遊び方もスマートで、岩亀では評判がいいそうです」
「そのロイドって奴はいつも一人で出かけてるのか?」
「勝蔵ってボーイがいつも一緒にいたみたいですよ。それが主人にバレたもんですから、勝蔵の方は2月末にクビになったそうです。どうせ外国人館に勤める奴ですから、どうやら江戸での落ちこぼれで、こいつがロイドを案内して、女遊びを教えてたらしいんですよ。外国人だってこういう奴らに誘われれば、調子に乗ることもあるでしょう。罪な奴ですね」
「その勝蔵って奴はその後どうなった。まだこの辺にいるのか?」
「さあ、どうでしょうね」
「そいつをさっさと調べてくれ。そいつにも友達がいるだろう。外国人館をクビになってからどうしたか。江戸に帰ったのか、こっちにいるのか、よく突き止めてこい。たいして難しい話じゃなさそうだけどな」
「はい。分かりました。なるはやで聞き出してきます」
「頼んだよ」

原文 (会話文抽出)

「そこで親分。おまえさんはほんとうに遊びですかえ。ひょっとすると今の一件が江戸の方へも響いて、その様子を見とどけに来たんじゃありませんか」
「はは、さすがに眼が高けえ。実はそれだ」
「いや、ありがてえ。おまえさんが来てくれりゃあ千人力だ」
「実はわたしも手古摺っているんだ。親分、後生だからいい智恵を授けておくんなせえ」
「いい智恵と云ってもねえが、見込みをつけて江戸から乗り込んで来た以上、ただ手ぶらでも引き揚げられねえ。そこで、三五郎。近い頃にどこかの異人館で物をとられたことはねえか」
「そうですね」
「物を取られた奴は幾らもあるが、どれもみんなこっちの人間ばかりで、異人館へ押し込んだ泥坊はないようですね」
「ほかに異人館から何か訴えて来たようなことはねえか」
「別にこうというほどの事もありませんが、たしか先月だとおぼえています。イギリスのトムソンという商館から奉行所の方へこんなことを内々で頼んで来ましたよ。自分のところで使っているロイドという若い番頭が、去年の夏頃から港崎町の岩亀へむやみに遊びに行って、ずいぶん荒っぽい金を使うらしいが、商館の方で渡す給金だけじゃあとても足りる筈がない。といって、当人はほかにたくさんの金を持っているとも思えないから、その金の出所がどうも不審だ。なにか商館の方の帳面づらを誤魔化して、抜け商いでもしているんじゃないかと、主人の方でもいろいろに調べているが、いずれ日本人を相手の仕事に相違ないから、そっちの奉行所の方でも内々で調べてくれと、こう云うんです。そこでわたしも探索してみると、まったくそのロイドという奴は岩亀の夕顔という女に熱くなって、むやみに金をふり撒いているらしいんです」
「そのロイドというのはどんな奴だ」
「なんでもイギリスのロンドンの生まれで、年は二十七だそうですが、日本語もちょいと器用に出来て、遊びっぷりも悪くないので、岩亀では評判がいいそうですよ」
「そのロイドという奴はいつも一人で出かけるのか」
「勝蔵というボーイがいつも一緒に出かけていたようです。それが主人に知れたもんですから、勝蔵の方は二月の末に暇を出されたそうです。どうで異人館奉公するような奴ですから、なんでも江戸の食いつめ者で、こいつがロイドを案内して行って、面白い味を教えたらしいんですよ。いくら異人だってこういう奴らにおだてられちゃあ、自然に泳ぎ出す気にもなりましょうよ。罪な奴ですね」
「その勝蔵という奴はそれからどうした。やっぱりここらにうろ付いているのか」
「さあ、どうですかね」
「それを早く調べてくれ。そいつにも誰か友達があるだろう。異人館をお払い箱になって、それからどうしたか。江戸へ帰ったか、こっちにいるか、よく突きとめて来てくれ。たいしてむずかしいこともあるめえ」
「あい。ようがす。なるたけ早く聞き出して来ましょう」
「しっかり頼むぜ」


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