岡本綺堂 『半七捕物帳』 「いい陽気になりました」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「すげえ陽気じゃねえか」
「ねえねえ、お姉ちゃん。今年はもう花見行かないの…?」
「ないわよ、どこへも…」
「だって、お父さんが忙しいから、私だって出かけるヒマないもん」
「お兄ちゃんもまだ…」
「こんなご時世に、のんきにお花見なんてできねえよ。体は2つあっても足りないくらいだ」
「花見の手ぬぐいや日傘持ってきたって、ことしは勘弁してよ」
「あら、焦るじゃないの。そんなことで来たわけじゃ…」
「お兄ちゃん、昨日の末広町の話知ってる?」
「末広町…。なんだよ、火事か?」
「冗談じゃないよ。火事くらいでわざわざ知らせに来るわけないでしょ。じゃあ、やっぱり知らないのね。自分の縄張り内のことなのに…」
「昨日のことなら、俺の耳にも届いてるはずだけど…。一体なんだよ」
「それ話す前に、実はね、お兄ちゃん。この21日に飛鳥山にお花見行こうと思ってるんです。世間が騒がしいから、今年は見送ろうと思ってたんですけど、若い衆が納まらなくて、やっぱりいつもの通り行くことになったんです。向島は最近、酔っ払い浪人の襲撃が多いみたいで、ちょっと遠くても飛鳥山の方がいいかなと思って。子供とかで30人くらいは揃ったんですけど、なるたけ人数多い方が盛り上がるんで、都合がついたらお姉ちゃんにも…」
「なんだなんだ。お花見は行けないって最初から言ってるだろ。それより、その末広町の話ってなんだよ?」
「だから、お兄ちゃん」
「お粂さんも機転が効くじゃない」
「お花見のお供と引き換えにどうよ?」
「お姉ちゃんだけじゃなくて、誰か5、6人誘って来て…。ね、いいでしょ?」

原文 (会話文抽出)

「いい陽気になりました」
「姉さん。今年はもうお花見に行って……」
「いいえ、どこへも……」
「なにしろ、内の人が忙がしいもんだから、あたしもやっぱり出る暇がなくってね」
「兄さんもまだ……」
「この御時節に、のんきなお花見なんぞしていられるものか。からだが二つあっても足りねえくらいだ」
「お花見の手拭きや日傘をかつぎ込んで来ても、ことしは御免だよ」
「あら、気が早い。そんなことで来たんじゃないのよ」
「兄さん、ゆうべの末広町の一件をもう知っているの」
「末広町……。なんだ、ぼやか」
「冗談じゃあない。ぼやぐらいをわざわざ御注進に駈けつけて来るもんですか。じゃあ、やっぱり知らないのね。燈台下暗しとか云って自分の縄張り内のことを……」
「ゆうべのことなら、もうおれの耳にはいっている筈だが……。ほんとうに何だ」
「それを話す前に、実はね、兄さん。この二十一日に飛鳥山へお花見に行こうと思っているんです。なんだか世間がそうぞうしいから、いっそ今年はお見あわせにしようかと云っていたんですけれど、やっぱり若い衆たちが納まらないので、いつもの通り押し出すことになったんです。向島はこのごろ酔っ払いの浪人の素破抜きが多いというから、すこし遠くっても飛鳥山の方がよかろうというので、子供たちや何かで三十人ばかりは揃ったんですが、なるたけ一人でも多い方が景気がいいから、なんとか都合がつくなら姉さんにも……」
「なんだ、なんだ。お花見はいけねえと初めっから云っているじゃあねえか。それよりも、その末広町の一件というのは何だよ」
「だから、兄さん」
「お粂さんも如才がない」
「お花見のお供と取っけえべえか」
「姉さんばかりでなく、誰か五、六人ぐらい誘って来て……。ね、よござんすか」


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