岡本綺堂 『半七捕物帳』 「それで、これからどうしようというのだ。ど…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「それで、これからどうします?このままじゃいられないですよね?」
「いろいろ手は尽くしたけど、向こうが強運だからね。今夜はもう無理だって諦めて、あなたのところへ駆けつけたんですから、覚悟してくださいよ」
「でも、姿を隠したらこっちに疑いがかかるんじゃないか?」
「それがダメなんです。未練があるんですよ」
「疑いがかかるどころじゃないですよ。バレバレだから、うろうろしてる場合じゃないんです。あなた、鈴ヶ森で獄門になって、海を眺めていたいんですか?」
「やめてくれ。想像しただけでもゾッとする。そりゃあこちらもこうなったら仕方ないよ。そうして、これからどこへ行くつもりだ?」
「駿府に知り合いがいるから、そこへ頼って、騒ぎが収まるまで貧乏生活をするつもりなんだよ。あなたも一緒に来ますか?」
「いやじゃないけど、毒を食らわば皿までってね。覚悟を決めるくらいなら、こっちにも旅費とかいろいろ準備があるし。5両や10両じゃ心もとないですよ」
「5両や10両って……」
「たったそれっきりですか?だから、さっきもあれほど念を押したんじゃありませんか。嘘でしょ?きっともっと持ってますよね。見せてくださいよ」
「いや、本当に10両はないんだ。じゃあ、こうしませんか。ここに8両と少しあるから、これだけ持って、あなたが少し先に行ってくれませんか?私は一旦家に帰って、残りの金を用意してから追いかけます。嘘じゃないよ、絶対に行く」
「ダメです、ダメです」
「そういうことを言って誤魔化して、10両にも満たない金で、私を追い払おうとしても無理ですよ。私に惚れたのが運の尽きで、私はあなたを見逃しませんよ」
「いや、そんなつもりじゃないけど、5両や10両じゃ無理なんです。隠してないですよ。疑うなら見せましょう」

原文 (会話文抽出)

「それで、これからどうしようというのだ。どうしても斯うしちゃあいられないのか」
「随分いろいろに趣向もして見たけれど、向うに荒神様が付いているんでね。今夜という今夜はもうどうにもしようがないと見切りをつけて、おまえさんのところへ駈け付けた訳なんですから、その積りで度胸を据えてくださいよ」
「だが、うっかり姿を隠したら猶々こっちに疑いがかかる訳じゃあないか」
「それがいけない。それが未練よ」
「疑いがかかるどころじゃない。もうすっかりと種をあげられてしまったんだから、うろうろしちゃあ居られないんですよ。お前さん、鈴ヶ森で獄門にかけられて、沖の白帆でも眺めていたいのかえ」
「よしてくれ。聞いただけでも慄然とする。そりゃあ私だってこうなったら仕方がない。そうして、これからどこへ行く積りだ」
「駿府の在にちっとばかり識っている人があるから、ともかくもそこへ頼って行って、ほとぼりの冷めるまで麦飯で我慢しているのさ。お前さん、どうしても忌かえ」
「いやという訳じゃあないが、毒食わば皿で、そう度胸を据えるくらいならば、こっちにもまた路用や何かの都合もある。五両や十両の草鞋銭でうかうか踏み出すのはあぶないからね」
「五両や十両……」
「お前さん。たったそれぎりかえ。だから、さっきもあれほど念を押して置いたんじゃありませんか。嘘、きっと嘘に相違ない。お前さん、もっと持っているんだろう。お見せなさいよ」
「いや、まったく十両と纒まっていないのだ。じゃあ、こうしてくれないか。ここに八両と少しばかりある。これだけ持って、おまえは一と足さきへ行ってくれないか。わたしは一旦家へ帰って、後金を都合してから追っ掛けて行く。なに、嘘じゃあない、きっと行く」
「いけない、いけない」
「そんなことを云ってうまく誤魔化して、十両にも足りない手切れ金で、あたしを体よく追っ払おうとしても、そうは行きませんよ。あたしのような者に魅こまれたのが因果で、あたしは飽くまでもお前さんを逃がしゃあしませんよ」
「いや、決してそんな訳じゃあないが、まったく五両や十両じゃあしようがない。いや、隠しているんじゃない。疑うなら出してみせる」


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