菊池寛 『仇討禁止令』 「拙者も、ぜひお加え下されい」…

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青空文庫図書カード: 菊池寛 『仇討禁止令』

現代語化

「俺も絶対に入れてくれ」
「いや、天野さん、あんたは遠慮したほうがいいよ。あんたを、そんな辛い立場に置くのは、俺たちの本意じゃない」
「いや」
「あんたたちの好意はよくわかってるよ。その気持ちがあるからこそ、俺に席を外せって言ったんでしょ。でも、さっきも言った通り、私事は私事、公事は公事。こんなときはお情けなんて一切無用にしてくれ」
「でも、天野さん、あんたは成田殿の娘さんと、もう婚約してるんだろ……」
「天下が大変なときに、そんな私情にこだわってられますか。心配しないでください！」

原文 (会話文抽出)

「拙者も、ぜひお加え下されい」
「いや、天野氏、貴殿はお控えなされたがよい。貴殿を、左様な苦しい立場に置くことは、我々の本意ではない」
「いや」
「貴殿方の御好意はよく分かっている。そのお心なればこそ、拙者に中座せよといわれたのであろう。しかし、先ほども申した通り、私事は私事、公事は公事。この場合左様な御斟酌は、一切御無用に願いたい」
「しかし、天野氏、貴殿は成田殿御息女とは、すでに御結納が……」
「天下大変の場合、左様な私情に拘っておられましょうや。無用な御心配じゃ！」

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