岡本綺堂 『半七捕物帳』 「今夜は殺された師匠の逮夜で、岩下の道場は…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「今夜は殺された師匠の通夜で、岩下の道場は朝から慌ただしいみたいだ。弟子もたくさん集まるだろう。あそこらで張り込めば、なにか釣れるかもな」
「そうしましょう」
「おい、亀。俺も考えたんだけど、あのズウフラって筒にどんな仕掛けがあるのか知らねえけど、遠くの人を呼ぶんだから、相当大きな声を出さなきゃいけないはずだ。いくら人通りの少ない畑や田んぼ道とはいえ、道の真ん中に立って大声を上げちゃあ、すぐにばれちゃうから、ちょっと離れたところから小さな声で呼ぶはずだな。つまりその人のすぐ後ろにいるってことで、そんなに遠くから呼ぶわけじゃないと思う。こっちが落ち着いて様子を見てれば、大体どこにいるかはわかるはずなのに、みんな怖がって慌てるからダメなんだよ」
「ほんとにおっしゃる通り、そんなに遠くから呼ぶわけないですよね。今夜張り込んでみましょうか」
「うん。道場の様子次第で、張り込んでみてもいいな」

原文 (会話文抽出)

「今夜は殺された師匠の逮夜で、岩下の道場は昼間からごたごたしていたようだ。弟子たちも相当に集まるだろう。あの辺へ行って網を張っていたら、なにか引っかかる鴨があるかも知れねえ」
「そうしましょう」
「おい、亀。おれもだんだん考えたが、あのズウフラというものは筒にどんな仕掛けがあるか知らねえが、遠くの人を呼ぶ以上、相当に大きな声を出さなけりゃあならねえ筈だ。いくら人通りの少ねえ畑や田圃路だといって、道のまん中に突っ立って呶鳴っていちゃあ、すぐに種が知れてしまうから、少し距れた所から低い声で呼ぶに相違ねえ。つまり其の人のすぐうしろにいねえと云うだけのことで、そんなに遠いところから呼ぶのじゃああるめえと思う。こっちが気を鎮めて窺っていれば、大抵の見当は付く筈だのに、みんなびくびくして慌てるからいけねえのだ」
「まったくお前さんの云う通り、そんなに遠いところから呼ぶのじゃああるめえ。今夜ひとつ張り込んで見ましょうか」
「むむ。道場の模様次第で、張り込んでみてもいいな」


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