岡本綺堂 『半七捕物帳』 「いや、別むずかしいことを訊くのじゃああり…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「いや、難しいことを聞くわけじゃないんです。立ち話でも済むんですけど、店先ではちょっとまずいんで、奥に通してもらったんです」
「実はですね、ちょっとなんですが、こちらには娘さんが二人いらっしゃるんですよね?」
「はい。姉は下谷の方に嫁いでます」
「妹さんは近所にちょっと嫁ぎましたけど……」
「じゃあ、それがおそのさんってことですよね。岡崎屋に嫁いだんですけど、岡崎屋と縁がなくなったって噂があるんですが、それは本当ですか?」
「まあ、そういうことなんですけど……。ご存知の通り、商売ってのはね、競争相手がいるもんで……。喧嘩したとかじゃないんですけどね……。なんだか縁がなかったってことなんでしょうか……」
「ねえ、番頭さん。私もお上の役で来たんで、隠したりしないでくださいよ。何も迷惑はかけませんから、正直に話してくださいよ。岡崎屋と縁がなくなったのは、他に何か理由があるんでしょ?それを聞きに来たんです」
「おっしゃる通りで、同じ商売なんですから、客の取り合いで親同士が仲が悪くなったもんで……」
「親同士だけじゃなく、本人同士の夫婦仲もなんだかうまくいかなくて……」

原文 (会話文抽出)

「いや、別むずかしいことを訊くのじゃあありません。立ち話でも済むことですが、店さきではちっと工合が悪いので、奥へ通して貰ったのです」
「実はほかの事じゃあありませんが、こちらには娘さんが二人あるそうですね」
「はい。姉は下谷の方に縁付いて居ります」
「妹は近所へ一旦片付きましたが……」
「じゃあ、それがおそよさんといって、白山前町の岡崎屋へ片付いたのですね。そこで、そのおそよさんが岡崎屋を不縁になったのは、同商売の競合いからだというような噂もありますが、そりゃあ本当ですか」
「まあまあ、そんなような訳でございまして……。御承知の通り、商売忌敵とか申しまして……。いえ、別に喧嘩をいたしたと云うのではございませんが……。つまり縁が無いと申すのでしょうか……」
「ねえ、番頭さん。わたしも御用で来たのだから、隠し立てをされちゃあ困る。決してお前さん達に迷惑は掛けねえから、みんな正直に云って貰おうじゃあありませんか。岡崎屋を不縁になったのは、何かほかに訳があるだろう。わたしはそれを訊きに来たのだ」
「お前さんのお言葉ですが、まったく同商売の顧客争いというようなことから、双方の親たちのあいだが面白く参りませんので……」
「親たちばかりでなく、当人同士の夫婦仲もなにぶん丸く参りませんので……」


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