GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「駿河屋が殺された……」
「まだ死んでませんが、もう危ないそうです」
「何があったんです? 今夜の4時過ぎに、清五郎って男と一緒に……。どこかで酒を飲んだ帰りのようです。いい気分で親父橋まで来かかると、橋のたもとにある柳の影から一人の男が飛び出してきて、いきなり信次郎の脇腹を刺したので……」
「相手は誰だ。音造か?」
「そうです。刺すとすぐに逃げ出したんですが、一緒にいた清五郎が追いかけて捕まえようとする。相手は必死で匕首を振り回す。そのはずみに清五郎は右手を少し切られました。それでも大きな声で人殺し人殺しって叫んでたので、近所の人も駆けつけて来て、音造はついに捕まりました。信次郎は駿河屋に運ばれて、医者の手当てを受けていますが、急所を深く刺されてるので、多分危ないだろうって噂です」
「一緒にいた清五郎ってのは何者だ?」
「向かいの両国の町の大工だそうです。本人が番屋で言った話だと、駿河屋で何か増築をするので、その相談で両国あたりで一緒に飲んで、駿河屋の主人を照降町まで送って帰る途中だということらしいです」
「やれやれ、まったく予想外の展開だな。その清五郎はまだ番屋にいるのか?」
「清五郎の傷はたいしたことがないので、そこで手当てをして、まだ番屋に残ってます。何しろ人殺しという事件ですから、八丁堀の旦那も出てくるはずです。住吉町の親分も来ていました」
原文 (会話文抽出)
「親分、たいへんな事が出来やした。駿河屋の信次郎が殺された」
「駿河屋が殺された……」
「まだ死にゃあしねえが、もうむずかしいと云うのです」
「なんでも今夜の四ツ過ぎに、清五郎という男と一緒に……。どこかで酒を飲んだ帰りらしい、ほろ酔い機嫌で親父橋まで来かかると、橋のたもとの柳のかげから一人の男が飛び出して、不意に信次郎の横っ腹を突いたので……」
「相手は誰だ。音造という奴か」
「そうです。突いてすぐに逃げかかると、連れの清五郎が追っかけて押さえようとする。相手は一生懸命で匕首をふり廻す。そのはずみに清五郎は右の手を少し切られた。それでも大きい声で人殺し人殺しと呶鳴ったので、近所の者も駈けつけて来て、音造はとうとう押さえられてしまいました。信次郎は駿河屋へ送り込まれて、医者の手当てを受けているのですが、急所を深くやられたので、多分むずかしいだろうという噂です」
「連れの清五郎というのは何者だ」
「向う両国の大工だそうです。本人が番屋で申し立てたのじゃあ、駿河屋で何か建て増しをするので、その相談ながら両国辺でいっしょに飲んで、駿河屋の主人を照降町まで送って帰る途中だということです」
「やれやれ、飛んだ番狂わせをさせやあがる。その清五郎はまだ番屋にいるのか」
「清五郎の疵はたいした事でもねえので、そこで手当てをした上で、まだ番屋に残っています。なにしろ人殺しというのですから、八丁堀の旦那も出て来る筈です。住吉町の親分も来ていました」