岡本綺堂 『半七捕物帳』 「やい、豊。てめえ、手むかいをする以上はも…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「「おい、豊。おまえ、反抗するってことは覚悟してるんだろうな。正直に全部話せ。おまえは信濃屋に泊まってる甚右衛門とどうつながったんだ?」
「別に親しくなったわけじゃないんです。去年の暮れに一度訪ねてきて、何か手文庫の錠前が壊れてるから直してくれってことで、宿屋に見に行ったんですが、あいにく留守で、こっちも忙しかったんでそれっきり行かなかったんですが、その甚右衛門はどうしたんですか?」
「しらばくれるな。さっき南京玉を見たとき、おまえはなんで顔色変えたんだ。さ、素直に話せ。おまえはなんで甚右衛門を殺した? 共犯者がいるんだろう、全部言え」
「でも親分、無理ですよ。なんで私が甚右衛門を……。さっきも言った通り、一度しか会ったことない男をなんで殺すんですか。わかってください」
「まだそんなこと言うのか。俺が無理かどうかは、南京玉に聞いてみろ」
「おまえがずっと強がってるなら、俺から説明してやる。あの甚右衛門って奴は田舎者っぽく振る舞ってるけど、実は贋金使いだ」
「どうだ、核心をついたろう?」
「あいつが南京玉を買い集めてるのは、贋金の材料にするつもりだ。あいつらの作る贋金の地金は、貧乏徳利の欠片を細かく砕いて使うらしいんだけど、最近は技術が上がって、小さな南京玉を削って地金にするってことを俺も前から聞いてる。それも一軒の店で一度にたくさん買うと目立つから、田舎者のフリしてあちこちの店から少しずつ買い集めてたんだろう。おまえは錺屋だ。あの甚右衛門と組んで、贋金を作る手伝いをしたんだろ。どうだ、それでもまだしらばっくれるか?」
「まだ話すことがあるぞ」
「おまえは良い嫁さん持ってるよな。あの子は品川からいくらで連れてきたんだ。その金はどこから出した? おまえたちが一年や半年、夜も寝ずに働いたって、女郎を身請けできるほどの金は稼げないはずだ。その金は全部甚右衛門から出てるんだろう」

原文 (会話文抽出)

「やい、豊。てめえ、手むかいをする以上はもう覚悟しているんだろう。正直に何もかも云ってしまえ。てめえは信濃屋に泊まっている甚右衛門とどうして近付きになった」
「別に近付きというわけじゃありません。去年の暮に一度たずねて来て、なにか手文庫の錠前がこわれているから直してくれというので、宿屋に見に行きましたが、あいにく留守で、こっちも忙がしいのでそれぎり行きませんが、その甚右衛門がどうか致しましたか」
「白らばっくれるな。さっき南京玉を見たときに、てめえはどうして顔の色を変えた。さあ、有体に申し立てろ。手前なんで甚右衛門を殺した。ほかにも同類があるだろう、みんな云ってしまえ」
「でも親分。無理ですよ。なんで私が甚右衛門を……。今もいう通り、たった一度しか逢ったことのない男をなんで殺す筈があるんです。察してください」
「まだそんなことを云うか。おれが無理か無理でねえか、南京玉に聴いてみろ」
「てめえがいつまでも強情を張るなら、おれの方から云って聞かせる。あの甚右衛門という奴は正直な田舎者のように化けているが、あいつは確かに贋金遣いだ」
「どうだ、図星だろう」
「あいつが南京玉を買いあつめているのは贋金の金に使うつもりだ。あいつらのこしらえる贋金の地金は、貧乏徳利の欠片を細かに摺り潰して使うんだが、それがこの頃はだんだん上手になって、小さい南京玉をぶっ掻いて地金にするということを俺はかねて聴いている。それも一軒の店で一度にたくさん買い込むと人の眼につくので、田舎者の振りをして方々の店から少しずつ買いあつめていたのに相違ねえ。てめえは錺屋だ。あの甚右衛門とぐるになって、贋金をこしらえる手伝いをしたろう。どうだ、これでもまだ白を切るか」
「まだ云って聞かせることがある」
「てめえはいい女房を持っているな。あの女は幾らで品川から連れてきた。その金はどこで都合して来た。てめえ達が一年や半年、夜の目も寝ずに稼いだって、女郎なんぞを請け出して来るほどの金はできねえ筈だ。その金はみんな甚右衛門から出ているんだろう」


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