岡本綺堂 『半七捕物帳』 「ここまでは巧く運んだが、この先がむずかし…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「「ここまで上手くいったけど、これからが難しいな」
「もう私は引き取ってもいいですか?」
「おう、お疲れ様。もう用は終わった」
「いや、ちょっと待ってくれ。まだ聞きたいことがある。一体この甚右衛門って男はなんの用で江戸に来てたのか、お前ら何も知らないか?」
「普段から無口な人で、私どもも毎朝毎夕の挨拶をするだけなので、どんな用のある人か全く存じません」
「定宿はここか?」
「去年9月頃にも10日間ぐらい泊まっていて、今回は2回目です」
「酒は飲むか?」
「はい。飲むと言っても、毎晩決まって一合くらいで、酔っ払ってるような様子を見たことはありません」
「誰かが訪ねてくることはあったか?」
「いや、訪ねてくる人はいないようです。朝はだいたい5時(午前8時)頃に起きて、昼飯を食べると毎日どこかに出かけているようです」
「5時……」
「田舎の人にしては朝寝だな。で、何時に帰ってくるんだ?」
「だいたい夕6時(6時)頃には一度帰ってきて、夜食を食べるとまたすぐ出かけて行きますが、それでも10時(午後10時)過ぎには必ず帰っていました。寄席でも聴きに行くような様子でしたが、確かなことはわかりません」
「金は持ってたみたいだが?」
「宿に初めて着いた時に、帳場に5両預けて、大晦日にそこから取れと言ってました。その残金は私どもがちゃんと預かってはいますが、自分で懐にいくら持っていたかはよくわかりません」
「外から帰ってくる時は、いつも手ぶらで帰ったか?」
「いいえ、いつも何か風呂敷包みを重たそうにぶら下げていました。村へのお土産をいろいろ買ってるらしいと女中は言ってましたが、何を買い込んでくるのか、聞いたことはありません」
「そうか。じゃ、お前ん家に行ってその座敷を調べるぞ」

原文 (会話文抽出)

「ここまでは巧く運んだが、この先がむずかしい」
「もうわたくしは引き取りましてもよろしゅうございましょうか」
「むむ、御苦労。もう用は済んだ」
「いや、少し待ってくれ。まだ訊きてえことがある。一体この甚右衛門という男はなんの用で江戸へ来ていたのか、おまえ達はなんにも知らねえか」
「ふだんから寡口な人で、わたくし共とも朝夕の挨拶をいたすほかには、なんにも口を利いたことがございませんので、どんな用のある人か一向に存じません」
「定宿かえ」
「去年九月頃にも十日ほど逗留していたことがございまして、今度は二度目でございます」
「酒をのむかえ」
「はい。飲むと申しても毎晩一合ずつときまって居りまして、ひどく酔っているような様子を見かけたこともございませんでした」
「誰かたずねて来ることはあったかえ」
「さあ、誰もたずねて来た人はないようです。朝は大抵五ツ(午前八時)頃に起きまして、午飯を食うといつでも何処へか出て行くようでございました」
「五ツ……」
「田舎の人にしては朝寝だな。そうして何時に帰ってくる」
「大抵夕六ツ(六時)頃には一度帰って来まして、夜食をたべると又すぐに出て行きますが、それでも四ツ(午後十時)すぎにはきっと帰りました。なんでも近所の寄席でも聴きに行くような様子でしたが、確かなことは判りません」
「金は持っていたらしいかえ」
「宿へ初めて着きました時に、帳場に五両あずけまして、大晦日には其の中から取ってくれと申しました。その残金はわたくし共の方に確かにあずかってございますが、自分のふところにはどのくらい持っていましたか、それはどうも判り兼ねます」
「外から帰ってくる時には、いつも手ぶらで帰ったかえ」
「いいえ、いつも何か風呂敷包みを重そうに提げていました。村への土産をいろいろと買いあつめているらしいと女中どもは申していましたが、どんなものを買って来るのか、ついぞ訊いて見たこともございませんでした」
「そうか。じゃあ、おめえの家へ行ってその座敷をあらためて見よう」


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