岡本綺堂 『半七捕物帳』 「亭主の清蔵とは勤めの時からの馴染で、昨年…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「「主人である清蔵とは昔からお勤めで親しくて、去年から引き取られて夫婦になりました」
「その清蔵が先月から左足の腫物が悪くなって、まだ仕事ができません。職人任せだとお店の方も思うようにいかず、私も心配していましたら、それには長谷寺の夜叉神様にお願いするのが一番だと言ってくれた人がいたので、日中は店を開けてられないから、夕方にお参りしますと、夜叉神様に願掛けに来たんです」
「この二朱銀はどうしたんだ?」
「女のくせに、二朱銀一個をそのまま帯に挟んでおくわけないですよね。あのお面の箱の中から見つけたんですか?」
「大変申し訳ございません。あの箱の中にある古いお面を探していたら、二朱銀一個が出てきました。きっと信心深い方が納めたんだろうと思って、そのままにして一旦帰ろうとしたのですが、さっきも言った通り、主人も病気で手元も苦しいものですから、これも夜叉神様からのお恵みかもしれないと思いまして、勝手な理屈をつけて……。また門前から引き返してきて、主人の病気が良くなったら必ず倍にしてお返ししますと、心の中で謝りながら……。本当に申し訳ございません」

原文 (会話文抽出)

「亭主の清蔵とは勤めの時からの馴染で、昨年から引き取られて夫婦になりました」
「その清蔵が先月から左の足に悪い腫物を噴き出しまして、いまだに立ち働きが出来ません。職人任せでは店の方も思うように参りませんので、わたくしも心配して居りますと、それには長谷寺の夜叉神さまにお願い申すに限ると教えてくれた人がありましたので、昼間は店を明けるわけには参りませんから、夕方から御参詣にまいったのでございます」
「この二朱銀はどうしたのだ」
「女のくせに、二朱銀一つを裸で帯のあいだに挟んでいる筈はねえ。あの面箱の中から探し出したのか」
「恐れ入りました。あの箱のなかの古いお面をさがして居りますうちに、二朱銀ひとつ見つけ出しました。大かた御信心の方が納めたのだろうと思いまして、そのままにして一旦は帰りかけましたが、唯今も申す通り、亭主の病気で手元の都合も悪いものですから、これも夜叉神さまがお授け下さるのかも知れないと、手前勝手の理窟をつけまして……。御門前からまた引っ返してまいりまして、亭主の病気が癒りましたら、きっと倍にしてお返し申しますと、心のうちでお詫びを申しながら……。まことに済まないことを致しました」


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