岡本綺堂 『半七捕物帳』 「親分、御苦労でした。八丁堀の御用は長谷寺…

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青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「「親分、お疲れっした。八丁堀の御用って長谷寺のことですよね?」
「おう。こっちでももう噂になってんのか。お見事、銭の兜だ」
「さっき八丁堀の人と話してきたけど、おめえはあの兜を見たか?」
「見ましたよ。奉納場に飾ってあるんで、触っちゃいけねえけど、なかなか細かい細工で……。江戸にそんな職人います?」
「俺はこの頃出不精になって、年寄りのくせに信心薄いから、まだ参拝してないけど、そんなに上手い兜から小判5枚を剥がすのは簡単じゃねえ。多分素人じゃねえだろ。金銀細工をする奴らだろう。前から狙ってたんだけど、昨日寺からのお達しで、急にその小判を外すことになったんで、あいつらも慌てて昨日のうちに剥がしに来たんだろう。こっちが油断してたのはもちろんだけど、あいつらもなかなか抜け目ねえ。でも、勘太。こりゃあ案外早くバレるぜ」
「そうですか」
「さっき言った通り、寺からのお達しが出て、3日で落ち着したのは昨日の夕方だそうじゃねえか。世間ではまだ知らないはずだ。それをすぐに知って仕事に来たってことは、何か寺内部に関わりがある奴らだろう。そのつもりで探りを入れたら、手がかりが見つかるかもな……」
「そうですね」
「なるほど、こりゃ寺の中を知ってる奴らに違いない。よし、そのつもりで調べてみよう」
「じゃ、俺も行ってみよう。どうせ参拝は終わってる時間だ。飯でも食ってから出かけよう」

原文 (会話文抽出)

「親分、御苦労でした。八丁堀の御用は長谷寺の一件じゃあありませんかえ」
「むむ。ここらでももう評判になっているか。察しの通り、銭の兜だ」
「今も八丁堀の旦那と話して来たのだが、おめえはあの兜を見たか」
「見ましたよ。奉納場に飾ってあるのだから、手を着けてみる訳にゃあいかねえが、なにしろなかなか念入りの細工で……。江戸にあんな職人はありますめえ」
「おれは此の頃出不精になったのと、年寄りのくせに後生気が薄いので、まだお開帳へ参詣をしなかったが、それほど念入りに出来ている兜から小判五枚を引っぺがすのは容易じゃあねえ。恐らく素人の芸じゃああるめえ。金銀細工をする奴らだろう。かねてから付け狙っているうちに、きのう寺社方からのお指図で、急にその小判を取り外すことになったので、奴らも慌ててゆうべのうちに引っぺがしに来たのだろう。こっちの油断は勿論だが、奴らもなかなか抜け目がねえ。だが、勘太。こりゃあ案外早く知れるぜ」
「そうでしょうか」
「今も云う通り、寺社方からのお指図が出て、三日の猶予で落着したのはきのうの夕方だと云うじゃあねえか。世間ではまだ知る筈がねえ。それをすぐに覚って仕事に来た以上、なにか内輪に係り合いのある奴に相違ねえ。そのつもりで探りを入れたら、手がかりが付きそうなものだと思うが……」
「そうですね」
「成程こりゃあ内輪の機密を知っている奴らに相違ありません。好うござんす。そのつもりで探ってみましょう」
「まあ、おれも一緒に行ってみよう。どうでもう開帳は仕舞った時刻だ。ゆう飯でも食って、それから出かけよう」


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