岡本綺堂 『半七捕物帳』 「だが、親分。猟師がなんだってそんな真似を…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「「でも、親分。猟師ってなんでそんなことすんだろ?」
「それは俺にもわかんねえよ」
「でも、槍突きって絶対その猟師だと思う。俺がこないだの晩、柳原の堤で突かれそうになった時、そいつの槍の柄をちょっと掴んだんだけど、手触りが本物の樫じゃないの。絶対竹だと思う。ってことは、槍突きって本物の槍じゃなくて、竹槍を持って来るんだ。十段目の光秀じゃねえんだから、侍が竹槍を持ってくるわけねえ。こりゃ絶対町人か百姓、多分百姓の仕業だと思ってずっと考えてたけど、同じ竹槍を毎晩持って歩いてるやつはいないよな。第一、昼間にその槍をどうするか困るから、槍はその時限りでどこかに捨てて、突きに出る時には新しい竹を切ってくるんだろうなって思ったから、民や寅に頼んで、辺りの竹藪を見張らせてるんだ。そしたら案の定、紺屋の長三郎が横網河岸の竹藪に潜り込もうとしてるやつを見つけたって言うんだよ。狐をつかまえるなんて嘘っぱちだ。あと、柳原で俺に突いて来た腕前が全然百姓の猪突き槍っぽくなかったんだ。穂先が空を舞わずに真下に突き下ろして来るやり方は、百姓にしてはちょっと上手すぎると思ってて、猟師だってことに気づかなかった。あいつ、熊や狼を突く感覚で人間を刺してるんだろ? 凄いよな。ま、ここまでわかれば後は考えなくていい。すぐに行って捕まえちまえ」
「わかりました。行ってくるっす」

原文 (会話文抽出)

「だが、親分。猟師がなんだってそんな真似をするんでしょう」
「そりゃあ俺にもわからねえ」
「だが、槍突きはその猟師に相違ねえと思う。俺がこの間の晩、柳原の堤で突かれそくなった時に、そいつの槍の柄をちょいと掴んだが、その手触りがほんとうの樫じゃあねえ。たしかに竹のように思った。してみると、槍突きは本身の槍で無しに、竹槍を持ち出して来るんだ。十段目の光秀じゃあるめえし、侍が竹槍を持ち出す筈がねえ。こりゃあきっと町人か百姓、多分百姓の仕業だろうと睨んだが、おなじ竹槍を毎晩かついで歩いている気づけえはねえ。第一、昼間その槍の始末に困るから、槍はその時ぎりで何処へか捨ててしまって、突きに出る時には新しい竹を伐り出して来るんだろうと思ったから、民や寅に云い付けて、そこらの竹藪を見張らせていると、案の通りそいつが横網河岸の竹藪へ潜り込もうとするところを、紺屋の長三郎が見つけたというじゃあねえか。狐をつかまえるなんていうのは嘘の皮だ。もう一つには柳原でおれに突いて来た腕前がなかなか百姓の猪突き槍らしくねえ。穂さきが空を流れずに真面に下へ下へと突きおろして来た工合が、百姓にしてはちっと出来過ぎるとおれも実は不思議に思っていたが、猟師とはちょいと気がつかなかった。あの野郎、熊や狼を突く料簡で人間をずぶずぶ遣りゃがるんだから恐ろしい。さあ、こう種があがったら考えることはねえ。すぐに行って引き挙げてしまえ」
「判りました。ようがす」


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