岡本綺堂 『半七捕物帳』 「なるほど親分の眼は高けえ。やっぱりお俊ら…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「さすが親分の目は高い。やっぱりお俊みたいです。とにかく、あの碁盤は伊勢屋から持ち出したものに間違いありません。近所の同業者に聞いてみると、柘榴伊勢屋には昔からの家に伝わる『薄雲の碁盤』があるそうです。その碁盤には、猫の魂が宿っていて、置くとネズミが出なくなるというので……」
「そうか。分かった」
「酒屋の番頭の話によると、お俊はネズミが大嫌いで、あの借家にネズミが出ると困っていたそうだ。そのネズミ対策のおまじないに、伊勢屋から薄雲の碁盤を持ってきたんでしょう。で、伊勢屋の主人はどんな奴だ?」
「伊勢屋の由兵衛は40歳くらいで、女房のおかめは35歳。夫婦に子供はいません。万力を非常に可愛がっていて、近所ではそのうち万力を養子にするんじゃないかって言われてますが、実際はそんなことはなさそうです。万力は21歳で、顔も良くて、力も強くて、性格も正直で大人しい。なので今後出世するだろうと噂されています。そんな万力がなぜ旦那の妾を殺したんでしょうか?」
「それについて、昨日もいろいろ考えたんだけど、この事件は小栗の屋敷の分家と関係があるらしい」
「小栗の分家は銀之助で、今年22歳。深川籾蔵前の大瀬喜十郎という旗本屋敷に養子に行ってるそうです。この銀之助が平井という旗本の遊び仲間で、私たちの花見の時の万力の刀を奪ったのはおそらく彼の仕業でしょう。彼は恐らくお俊と関わりがあって、万力は旦那への忠義と、自分自身の恨みで、お俊の首を碁盤に乗せて、あえて本家である小栗屋敷の前に捨てたのでしょう」
「それだと銀之助も一緒に殺しそうですが」
「殺すつもりだったけど失敗したのか、他に理由があったのか、どちらにせよ万力の仕業に間違いありません。でも相手は天下の力士です。確かな証拠を挙げない限り、安易に疑うことはできません。お前もう1つ頑張って、銀之助の方を調べてきてくれ。万力の脇差を奪ったのは本当に銀之助なのか、また、その銀之助がお俊の家に遊びに行っていたかどうか、そこをしっかり調べてくれ」
「わかりました。じゃあすぐにに行ってきます」

原文 (会話文抽出)

「なるほど親分の眼は高けえ。やっぱりお俊らしゅうござんすよ。なにしろ、あの碁盤は伊勢屋から出たものに相違ありません。近所の同商売の者に訊いてみると、柘榴伊勢屋には先代から薄雲の碁盤という物があるそうです。その碁盤には、猫の魂が宿っていて、それを置くと鼠が出ないと云うので……」
「そうか。判った」
「酒屋の番頭の話じゃあ、お俊は鼠が大嫌いで、あの貸家に鼠が出て困ると云っていたそうだ。その鼠よけのまじないに、伊勢屋から薄雲の碁盤を持ち込んだのだろう。そこで、伊勢屋の主人と云うのはどういう奴だ」
「伊勢屋の由兵衛は四十ぐらいで、女房のおかめは三十五、夫婦のあいだに子供はありません。あんまり万力を可愛がっているので、今に万力を養子にするのじゃあねえかと、近所じゃあ云っていますが、真逆にそうもなりますめえ。万力は二十一で、男も好し、力もあり、人間も正直でおとなしいから、今に出世をするだろうと、世間じゃあ専ら噂をしています。その万力がどうして旦那の妾を殺したのでしょうかね」
「それに就いて、ゆうべもいろいろ考えたのだが、この一件は、小栗の屋敷の舎坊に係り合いがあるらしい」
「小栗の舎は銀之助、ことし二十二で、深川籾蔵前の大瀬喜十郎という旗本屋敷へ養子に行っていると云う。これが平井という旗本の遊び友達で、例の花見の一件のときに、万力の刀をひったくったのは其の仕業だろうと思う。これが多分お俊に係り合いがあって、万力は旦那への忠義と、自分の遺恨とで、お俊の首を碁盤に乗せて、わざと本家の小栗の屋敷の前にさらして置いたのだろう」
「そんなら銀之助も一緒に殺らしそうなものですがね」
「殺らすつもりであったのを仕損じたのか、何かほかに仔細があったのか、どっちにしても万力の仕業に相違あるめえ。しかし相手は天下の力士だ。確かな証拠を挙げた上でなけりゃあ、むやみに御用の声は掛けられねえ。おめえはもう一つ働いて、銀之助の方を調べてくれ。万力の脇差を取ったのは確かに銀之助か、又その銀之助がお俊の家へ出這入りしていたかどうだか、それをよく洗い上げるのだ」
「わかりました。じゃあすぐに行って来ます」


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