岡本綺堂 『半七捕物帳』 「どこへ行く。天神様かえ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「どこに行くんですか? 天神様ですか?」
「明日は約束があって外出できないので、繰り上げて今日お参りしました」
「突然失礼なことを聞くけど、お俊さんは相変わらず元気ですか?」
「あら、ご存じないんですか。お俊さんは6月に縁談ですよ」
「全く知りませんでした。誰とですか? どこへ行ったんですか?」
「深川の柘榴伊勢屋の旦那に嫁いで、相生町1丁目に家を構えてますよ」
「相生町1丁目……。回向院の近くですね」
「そうです」
「お俊さんって薄化粧でしたね」
「いいえ」
「お俊ちゃんは顔立ちが評判で、あばたなんてありませんわ」
「そうだっけな」
「みんな同じ顔を見てるんだから間違いないと思いますけど、あの女たちに会った時、私もふと思い出しました。例の女はお俊に似てるなって……。でも、今の話だとお俊さんに薄化粧はないってことですか。仲間同士の言うことだから間違いないでしょう。それを聞いてガッカリしましたよ」
「むむ、俺も当てが外れました」
「あいつらの顔を見ると、急に俊ちゃんを思い出して、こりゃ当たったと思ったんですが、ただの瓜二つでやっぱりダメでしたね。柳橋を出てから天然痘にかかったと言えばそれまでだけど、例の女の顔は最近の天然痘の跡じゃない。でも、俺たちの商売に諦めは禁物だ。どうだ、帰り道だから回向院の前を通って、お俊の様子をさりげなく見届けようぜ」

原文 (会話文抽出)

「どこへ行く。天神様かえ」
「あしたはお約束で出られないもんですから、繰り上げて今日ご参詣にまいりました」
「だしぬけに変なことを訊くようだが、お俊は相変らず達者かえ」
「あら、御存じないんですか。お俊ちゃんはこの六月に引きましたよ」
「ちっとも知らなかった。誰に引かされて、どこへ行った」
「深川の柘榴伊勢屋の旦那に引かされて、相生町一丁目に家を持っていますよ」
「相生町一丁目……。回向院の近所だね」
「そうです」
「お俊は薄あばたがあったかね」
「いいえ」
「お俊ちゃんは評判の容貌好しで、あばたなんかありませんわ」
「そうだな」
「だれの眼も違わねえもので、あの女たちに逢った時に、わっしもふっと思い出しました。例の女は柳橋のお俊に似ていると……。だが、今の話じゃあお俊に薄あばたはねえと云う。おなじ仲間が云うのだから間違いはありますめえ。それを聞いてがっかりしましたよ」
「むむ、おれも当てがはずれてしまった」
「あいつらの顔をみると、急にお俊を思い出して、こりゃあ占めたと思ったが、他人の空似でやっぱりいけねえ。柳橋を引いてから疱瘡をしたと云えば云うのだが、例の女の顔はきのう今日の疱瘡の痕じゃあねえ。だが、おれ達の商売に諦めは禁物だ。どうだ、帰り道だから回向院前へ廻って、お俊の様子をよそながら見届けようぜ」


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