GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「そうらしいですよ」
「俺は見なかったけど、すごい評判だったんだってな」
「むむ。評判だけは俺も聞いてる」
「おい、お前さっきあの木像を嗅いで、どんな匂いがした?」
「なんか髪の油っぽい匂いがしました」
「むむ」
「善昌は尼さんだからな。髪の油は使わないはずだ。誰か油を使うやつが木像をいじったんだろ」
「となると、お国っていう女髪結いがやったのかもしれんな」
「お前はあそこの死体は誰だと思う?」
「え?」
「俺の調べでは、お国って女髪結いだな」
「そうなんですか?」
「どうして分かったの?」
「あの死体の手に油の匂いがします。梳き油や鬢付けの匂いだ。元結をいつも扱ってるのは、指を見ても分かる。善昌は32か33なのに、あの肉や肌の感じは40歳以上の女みたいだ。足の裏も固いんで、毎日出歩いてる女の足でしょう」
「じゃあお国の首を切って、その体にお国の法衣を着せてたってことか?」
「そうっぽいな。お国は昨日から帰ってないって言ってるけど、来年のお盆まで娑婆には戻って来れないだろうよ」
「でも、なんでわざわざお国を殺したんだろ。お国を自分の身代わりにして、善昌はどこかで隠れてるってわけか。お前はこれから帰って、お国っていう女の身元とか、普段の行いをよく調べてこい。そうすれば何か手がかりが見つかるだろう」
「わかりました。すぐに行ってきます」
「いや、待て。俺も一緒に行く。こういうことは早く解決した方がいい」
原文 (会話文抽出)
「蝶合戦のあったというのはここらだな」
「そうでしょう」
「わっしは見なかったが、なんでも大変な評判でしたよ」
「むむ。評判だけは俺も聴いている」
「おい、おめえはさっきあの木像を嗅いで、どんな匂いがした」
「なんだか髪の油臭いような匂いがしましたよ」
「むむ」
「善昌は尼だ。髪の油に用はねえ筈だ。なんでも油いじりをする奴があの木像に手をつけたに相違ねえ」
「すると、そのお国とかいう女髪結がいじくったかも知れませんね」
「おめえはあの死骸を誰だと思う」
「え」
「おれの鑑定では、あれがお国という女髪結だな」
「そうでしょうか」
「どうしてわかりました」
「あの死骸の手にも油の匂いがしている。梳き油や鬢付けの匂いだ。元結を始終あつかっていることは、その指をみても知れる。善昌は三十二三だというのに、あの肉や肌の具合が、どうも四十以上の女らしい。足の裏も随分堅いから、毎日出あるく女に相違ねえ」
「それじゃあお国の首を斬って、その胴に善昌の法衣を着せて置いたんでしょうか」
「まずそうらしいな。お国はゆうべから帰らねえというが、おそらく来年の盆までは娑婆へ帰っちゃあ来ねえだろうよ」
「それにしても、なぜお国を殺したかが詮議物だ。お国を自分の替え玉にして残して置いて、本人の善昌はどこにか隠れているに相違ねえ。おめえはこれから引っ返して、お国という女の身許や、ふだんの行状をよく洗って来てくれ。そうしたら何かの手がかりが付くだろう」
「ようがす。すぐに行って来ます」
「いや、待ってくれ。おれも一緒に行こう。こんなことは早く埒をあける方がいい」