岡本綺堂 『半七捕物帳』 「おい、小僧。おめえはえれえことをやったな…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「おい、小僧。よくやったな。命がけで主人の娘を助けたんだ。国から褒美が出るかもしれないぞ。でもなんで刀を持って長太郎を追いかけたんだ? あいつが娘を連れ去ろうとするのを見たのか?」
「はい、見ました。長太郎が包丁でお雪さんを脅して、無理やりどこかに連れて行こうとしてたのを見て、素手じゃダメだと思って、台所からすぐに包丁を持って行きました。それで溜池のところで追いついたんです」
「よし、わかった。でもまだ1つわからないことがある。なんで他の人に知らせずに、自分で包丁を持って行ったんだ。おかしいだろ」
「ここが大事なんです」
「お前が褒美をもらうか、犯人になるか、2つのうち1つの大事なことだ。落ち着いて答えろ」
「では、こちらから言いますと、あなたは何らかの理由で長太郎さんを恨んでいませんか? 娘を助けるのももちろんですが、それ以外にも、ここで長太郎さんを殺してしまおうという考えはなかったですか? どうですか。はっきり答えてください」
「申し訳ありません」
「むむ、そうか」
「素直に言ってくれてよかった。では、なぜ長太郎さんを殺そうと思ったんだ? 長太郎さんと何か恨みがあるのか?」
「どうしても仇のように思えてなりませんでして……」
「仇……。むむ、お前は津の国屋の番頭の親戚なんだな?」
「はい。金兵衛さんの縁で津の国屋に奉公に上がりました」
「その金兵衛さんの仇……。長太郎さんが金兵衛さんを殺したのか?」
「どうしてもそう思えてなりません」

原文 (会話文抽出)

「おい、小僧。おめえはえれえことをやったな。命がけで主人の娘の難儀を救ったんだ。お上から御褒美が出るかも知れねえぞ。しかしおめえはどうして刃物を持って長太郎のあとから追っかけて行ったんだ。あいつが娘を連れ出すところを見ていたのか」
「はい、見ていました。長太郎が刃物でお雪さんをおどかして、無理にどこへか連れて行こうとするのを見ましたから、空手じゃあいけないと思って、すぐに台所から出刃庖丁を持ち出して行きました。そうして溜池のところで追っ付いたんです」
「よし、判った。だが、まだ一つ判らねえことがある。おめえはそれを見つけたら、なぜほかの者に知らせねえ。自分一人で刃物を持ち出して行くというのはおかしいじゃねえか」
「ここが大事のところだ」
「おめえが褒美を貰うか、下手人になるか、二つに一つの大事のところだ、よく落ち着いて返事をしろ」
「じゃあ、おれの方から云うが、おめえは何か長太郎を怨んでいるな。娘を助ける料簡も無論だが、まだ其のほかに、いっそここで長太郎をやっつけてしまおうという料簡がありゃあしなかったか、どうだ。はっきり云え」
「恐れ入りました」
「むむ、そうか」
「よく素直に申し立てた。そこで、なぜ長太郎をやっつける気になった。長太郎になにか遺恨でもあるのか」
「どうも仇のように思われてなりませんので……」
「かたき……。むむ、おめえは津の国屋の番頭の親類だということだな」
「はい。金兵衛の縁で津の国屋へ奉公にまいりました」
「その金兵衛の仇……。長太郎が金兵衛を殺したのか」
「どうもそう思われてなりません」


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