岡本綺堂 『半七捕物帳』 「どうしたんでしょうねえ、心中でしょうか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「どうしたんでしょうね、心中かな?」
「まあ、そうらしいよ。何か遺書みたいなものもないみたいだけど、男と女が一緒に死んでりゃ大体心中だろ」
「だって、全然年が違うじゃないですか」
「そこが思惑が違うとか言えるんだろうな。店のことは悪く言いたくないけど、おかみさんもどうにもならなかったんだよ。前に話した通り、お安っていう貰い娘をひどく追い出したのも、おかみさんが旦那に吹き込んだんだろ。そういうことが結局祟ったのかもな。とにかく津の国屋は大騒ぎだよ。2人もいっぺんに死んでるんだから、内緒にも何にもできない。とりあえず旦那を下谷から呼んだり、検視受けたり、家の中はめちゃくちゃになってる。どうせ店のことだから、俺も朝から手伝ってるんだけど、娘と奉公人ばっかりじゃどうにもならなくて困ってる」
「そうですよね」
「それで検視はもう終わったの?」
「いや、検視は今来たところだよ。そんなところにうろついてると面倒くさいから、俺はちょっと外してきて、検視が終わった頃にまた行こうと思ってる」
「それじゃあ、私ももう少し後に行きます。そんなわけだからお悔やみっていうのも変だけど、全然知らない顔もできませんからね」
「そりゃそうだろ。まして師匠はあの家に幽霊連れて行ったんだし」
「やめてくださいよ」
「どうかお願いだから、もうそんな話はしないでください。なんで俺がこんなこと巻き込まれなきゃいけないんですか」

原文 (会話文抽出)

「どうしたんでしょうねえ、心中でしょうか」
「まあ、そうらしい。別に書置らしいものも見当らねえようだが、男と女が一緒に死んでいりゃ先ずお定まりの心中だろうよ」
「だって、あんまり年が違うじゃありませんか」
「そこが思案のほかとでもいうんだろう。出入り場のことを悪く云いたかねえが、あのおかみさんも一体よくねえからね。いつかも話した通り、お安という貰い娘をむごく追い出したのも、おかみさんが旦那に吹っ込んだに相違ねえ。そんなことがやっぱり祟っているのかも知れねえよ。なにしろ津の国屋は大騒ぎさ。二人も一度に死んでいるんだから、内分にも何にもなることじゃあねえ。取りあえず主人を下谷から呼んでくるやら、御検視を受けるやら、家じゅうは引っくり返るような騒動だ。なんと云っても出入り場のことだから、おいらも今朝から手伝いに行ってはいるが、娘と奉公人ばかりじゃあどうすることも出来ねえので弱っている」
「そうでしょうねえ」
「それで御検視はもう済んだんですか」
「いや、御検視は今来たところだ。そんなところにうろついていると面倒だから、おいらはちょいとはずして来て、御検視の引き揚げた頃に又出かけようと思っているんだ」
「それじゃあ、あたしももう少し後に行きましょう。そんな訳じゃあお悔みというのも変だけれど、まんざら知らない顔も出来ませんからね」
「そりゃあそうさ。まして師匠はあすこの家まで幽霊を案内して来たんだもの」
「いやですよ」
「後生ですから、もうそんな話は止して下さいよ。なんの因果で、あたしはこんな係り合いになったんでしょうねえ」


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