岡本綺堂 『半七捕物帳』 「そこで飴屋はどうなりました」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「じゃ、飴屋はどうなったの?」
「はははははは」
「これは話さない方がいいかも……。飴屋は4、5日姿を見せないで、また現れました。もう見逃すわけにもいかないので、庄太が捕まえて尋問すると、いや、もう、意気地のない奴で、小さくなって恐縮しています。だんだん調べると、こいつは外神田の藤屋っていうそこそこの小間物屋の息子で、名前はたしか全次郎でした。稽古事に通って、吉原にも行ってた。よくある遊び人で、当然勘当され、長年付き合いのある左官屋に引き取られて、その2階に転がってました。ただ遊んでても仕方がないので、勘当が許されるまで何か商売をしろと勧められたんだけど、やっぱり根が遊び人だから、肩に棒を担ぐようなまじめな商売はできない。そこで唐人飴を考えて、ちょっと踊りができるから、これがいいだろうということになったんですが、さすがに江戸の中心では困るので、遠い場末の青山あたりに出かけることになったんです。まあまあの店の若旦那が飴屋になって、鉦を叩いて踊り歩く。他人から見るとかなりかわいそうなんですが、本人は結構呑気で、道でカンカンノウを踊ってるのが面白いという始末。どうにも困ったもので、これじゃ勘当はなかなか許されません。おまけに母親が甘いので、勘当と言いつつも内緒で小遣いくらいは送ってくれるから、飴が売れても売れなくても関係ない。遊び半分で歌ったり踊ったりしてる。正体がばれたらこういう奴で、密偵でも泥棒でも何もない。本当に笑っちゃいました。それでも唐人の腕が二度も斬られたってことで、自分もなんだか気味悪くなって、4、5日場所を変えて、青山あたりには近づきませんでしたが、馴染みのない場末はつまらないと見えて、また青山あたりをうろついていたところを庄太に捕まったんです。青山あたりを荒らした賊は別にいるので、それはまた改めてお話する時があります。全次郎は正体が分かったんで、急に信用を取り戻して、飴もよく売れるようになったそうです。何が幸いするかわかりませんね」

原文 (会話文抽出)

「そこで飴屋はどうなりました」
「はははははは」
「これはお話をしない方がいいくらいで……。飴屋は四、五日ほど姿を見せないで、又あらわれて来ました。もう打っちゃっては置けないので、庄太が取っ捉まえて詮議すると、いや、もう、意気地のない奴で、小さくなって恐縮している。だんだん調べると、こいつは外神田の藤屋という相当の小間物屋のせがれで、名はたしか全次郎といいました。稽古所ばいりをする、吉原通いをする。型のごとくの道楽者で、お定まりの勘当、多年出入りの左官屋に引き取られて、その二階に転がっていたんですが、ただ遊んでいても仕方がない、勘当の赦りるまで何か商売をしろと勧められた。といっても根が道楽者だから肩に棒を当てるようなまじめな商売も出来ない。そこで考えたのが唐人飴、ちっとは踊りが出来るので、これがよかろうと云うことになったが、さすがに江戸のまんなかでは困るので、遠い場末の青山辺へ出かけることになったんです。 相当の店の若旦那が飴屋になって、鉦をたたいて踊り歩く。他人から見れば随分気の毒なわけですが、当人頗るのん気で、往来でカンカンノウを踊っているのが面白いという始末。どうも困ったもので、これでは勘当はなかなか赦りません。おまけに女親が甘いので、勘当とはいいながら内証で小遣いぐらいは届けてくれるので、飴は売れても売れないでも構わない。道楽半分に歌ったり踊ったりしている。正体を洗えばこういう奴で、隠密も泥坊もあったもんじゃない。実に大笑いでした。それでも唐人の腕が二度も斬られたと云うので、自分もなんだか気味が悪くなって、四、五日ばかり場所をかえて、青山辺へは寄り付かなかったんですが、馴染のない場末は面白くないと見えて、又もや青山辺へ立ち廻って来たところを庄太に押さえられたんです。 青山辺を荒らした賊は別にあるので、これは又あらためてお話をする時がありましょう。全次郎はその正体が判ったので、俄かに信用を回復して、飴もよく売れるようになったそうです。何が仕合わせになるか判りません」


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