岡本綺堂 『半七捕物帳』 「どうした」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「どうしたんだ?」
「また斬られた奴が出たか?」
「その通り……。場所も同じ羅生門横町に、唐人飴の片腕がまた落ちてた」
「そうか」
「それからどうした?」
「やっぱり唐人の筒袖のままです。いくら羅生門横町でも、3日と経たずに2度も腕を斬られたんじゃ、近所は大騒ぎ、俺も面食らいましたよ」
「腕は前のと同じようなのか?」
「違います。前のは白い腕でしたが、今度のは黒い頑丈な腕です。前のは若い奴でしたが、今度のは30以上、40ぐらいの奴じゃないかと思います。とにかく泊まり込みで張り込んでたのに、こんなことになっちゃって、どんなに叱られても一言もありません。庄太の一生の不覚、申し訳ありません」
「今さら叱っても後の祭りだ。その罪滅ぼしに一生懸命働け」
「お前はさっさと青山に帰って、そこの外科医を調べてこい。今度斬られたのは近所の奴だ。昨日のうちに手当てを頼みに行ったに違いない。斬った奴も大抵心当たりがある。俺は誰かを連れて行って、その犯人を見つけてやる」
「犯人はあたりが付いてるの?」
「大抵は分かってる。やっぱり目の前にいる奴だ。浅川の芝居にいる市川照之助だろうな。あいつは力を授かるために仁王様を拝んでたみたいだ。とにかくあいつの目がおかしいと思い、昨日からずっと睨んでたんだ」
「でも、唐人飴とどういう関係があるんだろう。斬られた腕は二度とも唐人飴の筒袖を着ていたけど……」
「お前は知らねえだろうが、鳳閣寺で女芝居の国姓爺を上演してるんだ。安い芝居だから、衣装なんかもひどいもんで、虎狩りや楼門に出てくる唐人も満足な衣装を着てねえ。みんな安物の更紗で、唐人飴とそっくりな格好だ。それを見ると、今回の腕の件は、この女芝居の楽屋に関係してるらしいと思ってたが、やっぱりそうらしい。照之助って奴が誰かの腕を斬って、唐人の衣装の袖を巻いて、わざと羅生門横町に捨てたんだろう。その理由もだいたい察しがつくが、それを話すと長くなる。こういうことを頭に入れて、お前はさっさと青山に行け」
「分かりました。すぐに行きます」
「おい、亀、ご苦労だが、青山まで一緒に行ってくれ」
「内容は途中で話す」

原文 (会話文抽出)

「どうした」
「また斬られた奴があるのか」
「その通り……。場所も同じ羅生門横町に、唐人飴の片腕がまた落ちていました」
「そうか」
「それからどうした」
「やっぱり唐人の筒袖のままです。なんぼ羅生門横町でも、三日と経たねえうちに二度も腕を斬られたのだから、近所は大騒ぎ、わっしも面くらいましたよ」
「腕は前のと同じようか」
「違います。前のは生っ白い腕でしたが、今度のは色の黒い、頑丈な腕です。前のは若い奴でしたが、今度のはどうしても三十以上、四十ぐらいの奴じゃあねえかと思われます。なにしろ泊まり込みで網を張っていながら、こんな事になってしまって、なんと叱られても一言もありません。庄太が一生の不覚、あやまりました」
「今さら叱っても後の祭りだ。その罪ほろぼしに身を入れて働け」
「おめえは早く青山へ引っ返して、そこらの外科医者を調べてみろ。今度斬られたのは近所の奴だ。ゆうべのうちに手当てを頼みに行ったに相違ねえ。斬った奴も大抵心あたりがある。おれは誰かを連れて行って、その下手人を見つけてやる」
「下手人はあたりが付いていますか」
「大抵は判っている。やっぱり眼のさきにいる奴だ。浅川の芝居にいる市川照之助だろう。あいつは力を授かるために仁王さまを拝んでいたらしい。どうもあいつの眼の色が唯でねえと、おれはきのうから睨んでいたのだ」
「でも、唐人飴とどういう係り合いがあるのでしょう。斬られた腕は二度とも唐人飴の筒袖を着ていたのですが……」
「おめえは知るめえが、鳳閣寺の女芝居で国姓爺の狂言をしている。十六文の宮芝居だから、衣裳なんぞは惨めなほどにお粗末な代物で、虎狩や楼門に出る唐人共も満足な衣裳を着ちゃあいねえ。みんな安更紗の染め物で、唐人飴とそっくりの拵えだ。それを見ると、今度の腕斬りの一件は、この女芝居の楽屋に係り合いがあるらしいと思っていたが、いよいよそれに相違ねえ。照之助という奴が誰かの腕を斬って、それに唐人の衣裳の袖をまき付けて、わざと羅生門横町へ捨てて置いたのだろう。その訳も大抵察しているが、それを云っていると長くなる。これだけのことを肚に入れて、おめえは早く青山へ行け」
「わかりました。すぐに行きます」
「おい、亀、御苦労だが、青山まで一緒に行ってくれ」
「筋は途中で話して聞かせる」


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