岡本綺堂 『半七捕物帳』 「だが、土地の奴らも愚昧ですよ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「でも、この辺の奴らもアホっすよ」
「地元の人間はしょうがねえとしても、町役人みたいな連中はもうちょい賢そうに見えそうだけど……。その腕は現場で斬られたんじゃねえでしょ、どっからか捨てに来たのか、犬がくわえて来たのか、二択っすよ。人間の腕一本切ったら、血がべちゃべちゃ流れるはずだけど、そんな跡は残ってねえ」
「最初にそれを見つけたって常磐津の師匠はどんな女?」
「実相寺門前にいる文字吉って奴で、俺が行ったら湯に行ってるってことで留守だったけど、近所の話じゃ34、5歳で、肌が浅黒くて、気が強そうな顔立ちで、顔自体は悪くないらしいよ……。浄瑠璃自体はそんなに上手いわけじゃねえけど、いい弟子がいて、遠くから通ってくるのもいるから、場末の師匠にしては裕福らしいって噂っす」
「文字吉に旦那とか亭主はいないの?」
「旦那がいるらしいっす」
「原宿町の倉田屋って酒屋の亭主らしいけど、文字吉は旦那一筋で浮気らしいこともせず、旦那に気兼ねして男の弟子は絶対にとらないらしいよ。今時の師匠じゃ珍しいでしょ」
「変わったやつだな。奉行所に呼び出して、褒美に鳥目5貫文ぐらいやればいいのに」
「まあ師匠はいいとして、その腕問題だけど……。その唐人飴屋ってのは誰だよ。家はどこだ?」
「四谷の法善寺門前の虎吉って奴だって聞いてんすけど、帰り道に四谷に寄って、北町の法善寺門前を一軒ずつ当たってみたけど、そんな奴はどこにもいねえんすよ。アイツ、絶対嘘っぱちっすよ」
「そうかもな。でも、この広い江戸に唐人飴が50人も100人もいるわけねえだろ。一人ずつ仲間を当たっていけば、そのうち見つかるっしょ」
「じゃ、すぐに取りかかりますか?」
「とにかくそうするしかないな」
「ちょうどいいことに、下っ引きの源次の友達に飴屋がいるらしいんすよ。あいつと相談してやってくれ。俺も青山に行ってくる」
「おい、庄太。地元の人たちはその飴屋を密偵だとか捕り方だとか言ってるらしいけど、そんなわけねえよな」

原文 (会話文抽出)

「だが、土地の奴らも愚昧ですよ」
「土地の奴らはまあ仕方がないとしても、町役人でも勤める奴らはもう少し眼が明いていそうなものだが……。その腕は現場で斬られたものじゃあねえ、何処からか捨てに来たのか、犬がくわえて来たのか、二つに一つですよ。人間の腕一本を斬ったら、生血がずいぶん出る筈だが、そこらに血の痕なんか碌々残っていやあしません」
「初めにそれを見付けたという常磐津の師匠はどんな女だ」
「実相寺門前にいる文字吉という女で、わっしがたずねて行ったときには、湯に行ったとか云うので留守でしたが、近所の話じゃあ何でも年は三十四五で、色のあさ黒い、力んだ顔の、容貌は悪くない女だそうで……。浄瑠璃は別にうまいという程でもねえが、なかなか良い弟子があって、ずいぶん遠い所から通って来るのがあるので、場末の師匠にしては内福らしいという噂です」
「文字吉には旦那も亭主もねえのか」
「旦那はあります」
「原宿町の倉田屋という酒屋の亭主だそうですが、文字吉は感心にその旦那ひとりを守っていて、ちっとも浮気らしい事をしねえばかりか、その旦那に遠慮して男の弟子をいっさい取らねえと云うのです。今どきの師匠にゃあ珍らしいじゃありませんか」
「めずらしい方だな。奉行所へ呼び出して、鳥目五貫文の御褒美でもやるか」
「師匠はまあそれとして、さてその腕の一件だが……。その唐人飴屋というのは何奴かな。家はどこだ」
「四谷の法善寺門前の虎吉という奴だと聞きましたから、実は帰り路に四谷へまわって、北町の法善寺門前を軒別に洗ってみましたが、虎も熊も居やあしません。野郎、きっと出たらめですよ」
「そうかも知れねえ。だが、この広い江戸にも唐人飴が五十人も百人もいる筈はねえ。それからそれへと仲間を洗って行ったら、大抵わかるだろう」
「じゃあ、すぐに取りかかりますか」
「ともかくもそうしなけりゃあなるめえ」
「丁度いいことには、下っ引の源次の友達に飴屋がある筈だ。あいつと相談してやってくれ。おれも青山へ一度行ってみよう」
「なあ、庄太。土地の者はその飴屋を隠密だとか捕方だとか云っているそうだが、よもやそんなことはあるめえな」


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