岡本綺堂 『半七捕物帳』 「おまえさん、あの蕎麦屋の娘を知っていなさ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「あなた、あの蕎麦屋の娘さんを知っていますか?」
「はい、時々あそこに寄るので、夫婦や娘とも親しくしています。娘はお杉といって、この間まで奉公に出ていたんです」
「もう20歳くらいでしょうね」
「そうです。本人はもう少し奉公していたかったようですが、無理に辞めさせて、この春から家に連れてきたんです。でも、運悪くいい縁談がなく、いまだに1人でいるようです」
「どこに奉公していたんですか?」
「雑司ヶ谷の吉見仙三郎という鷹匠の家にいたそうです。そんなわけで、私とは特に親しくしていますが……」
「その吉見というのはいくつくらいの人ですか?」
「23、4くらいでしょうか」
「独身ですか?」
「組が違うのでよく知りませんが、もう奥さんがいるはずです。そうです、そうです。奥さんがいると、あのお杉が話したことがありました。吉見さんには時々会いますが、肌が浅黒く、人柄がよく、なかなか機転の利く人です。その代わりかなりの遊び人だそうですが……」
「そうですか」
「あの娘は何年くらい吉見さんに奉公していたんですか?」
「何でも17歳から奉公していたとかいうことです」
「雑司ヶ谷の組の人たちも目黒のほうにタカの調教にやって来ますか?」
「時々やって来ます」
「あなた。大変ですが、もう一度あの蕎麦屋に引き返していただけませんか?」
「はい」
「何か、忘れ物でも……」
「さあ、どうも大きな忘れ物が残してきたようです」
「あなたの鳥かごにはまだ3匹しか入っていませんね」
「今日は出足が遅かったので、まだ1匹も捕れていません」
「むむ、3匹でもいいんですが、そうですね、あと2、3匹捕れませんか?」
「今はここらがタカのよく寄る時期なので、2、3羽はすぐに捕まえることができますよ」
「じゃあ、不好意思ですが、そこらに行って2、3匹捕まえてきてくれませんか?できるだけ多いほうがいいです」

原文 (会話文抽出)

「おまえさん、あの蕎麦屋の娘を知っていなさるのかえ」
「はあ、時々あすこの家へ寄りますので、夫婦や娘とも心安くして居ります。娘はお杉といって、この間まで奉公に出ていたのでございますよ」
「もう二十歳ぐらいでしょうね」
「左様だそうです。当人はもう少し奉公していたいと云うのを無理に暇を取らせて、この春から家へ連れて来たのですが、やはり長し短しで良い婿がないそうで、いまだに一人でいるようでございます」
「どこに奉公していたんです」
「雑司ヶ谷の吉見仙三郎という御鷹匠の家にいたのだそうです。そんな訳で、わたしとは特別に心安くしているのですが……」
「その吉見というのは幾つぐらいの人ですね」
「二十三四にもなりましょうか」
「独り身ですかえ」
「組が違うのでよく知りませんが、もう御新造がある筈です。そうです、そうです。御新造様があると、あのお杉が話したことがありました。吉見さんには時々逢うこともありますが、色のあさ黒い、人柄のいい、なかなか如才ない人です。そのかわり随分道楽もするそうですが……」
「そうですか」
「あの娘は何年ぐらい吉見さんに奉公していたんですえ」
「なんでも十七の年から奉公していたとかいうことです」
「雑司ヶ谷の組の人たちも目黒のほうへお鷹馴らしに出て来ますかえ」
「ときどきに出て来ます」
「おまえさん。御苦労だが、もう一度あの蕎麦屋へ引っ返してくれませんか」
「はあ」
「なにか、忘れ物でも……」
「さあ、どうも大きな忘れ物をして来たらしい」
「おまえさんの鳥籠にはまだ三匹しかはいっていませんね」
「けさは遅く出て来たものですから、まだ一向に捕れません」
「むむ、三匹でもいいが、そうですね、もう二、三匹捕れませんかえ」
「今はここらにたくさん寄る時分ですから、二羽や三羽はすぐに捕れます」
「じゃあ、済みませんが、そこらへ行って二、三匹さして来てくれませんか。なるべく多い方がいい」


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