GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』
現代語化
「つまり新兵衛はすっかり改心していたんですけど、長平は本物の善人になり切れてなかったもんだから、すぐに元に戻って、結局こんな事件を起こしてしまったんですよ」
「長平は当然捕まったんですよね?」
「河童の自白で大体見当がついたので、お照さんの家の近くを毎晩張り込んでたら、新兵衛の初七日の翌日に、やっぱり長平が短刀を飲んで家に入ってきて、お浪を脅かしてたところを踏み込んで捕まえました。長平は当然死罪になりましたけど、長吉の方はまだ子供で、最後までおやじの仇を討つつもりでやったことなので、上も情けを掛けて遠島ということで収まりました。これがフィクションだと、娘や芸妓やその情夫の定次郎にもいろいろ疑惑がかかって、面白い探偵小説になるんでしょうけど、実話はそううまくいきませんよ。ははははは。ただちょっと自慢しておくと、最初から芸妓や情夫の色っぽい方には目もくれずに、あくまでも善人のおやじの方に因縁があるだろうと睨んでたことですよ。腕に刺青が入ってるくらいですから、新兵衛はそれ以前にも悪いことをたくさんしてたんでしょうが、せっかく改心したのにかわいそうなことをしました。河童を川に投げ込んだ武士ですか?それは誰なのかわかりません。その人は向島で河童を退治したなどと自慢してたかもしれませんよ。当時の向島は今とは全然違って、前に話したとおり、狸も狐も河獺も河童も出そうな場所だったんですから」
「蛇も出たんでしょう?」
「蛇……。謎かけはやめてください。ついでに全部話しますよ。でもこの蛇の話はちょっと曖昧なところがあるんです。まあ、そのつもりで聞いてください。場所は向島の寮で、今の言葉で言えば、その秘密の扉を私が開けたってことです」
原文 (会話文抽出)
「これは河童の長吉の白状と、長平の白状とをつきまぜたお話で、長吉は叔父の手さきに使われて、ただ一途に親父のかたき討の料簡でやった仕事なんです」
「つまり新兵衛の方はすっかり善人になり切っていたんですが、長平の魂はまだほんとうの善人になり切らないもんですから、すぐにあと戻りをして、とうとうこんな事件を出来させてしまったんですよ」
「長平は勿論つかまったんですね」
「河童の白状で大抵見当が付きましたから、それからお照の家の近所に毎晩張り込んでいますと、新兵衛の初七日が済んだ明くる晩に、案の定その長平が短刀を呑んで押し込んで来て、どうする積りかお浪を嚇かしているところを、すぐに踏み込んで召捕りました。長平は無論に死罪でしたが、長吉の方はまだ子供でもあり、どこまでも親のかたきを討つつもりでやった仕事ですから、上にも御憐愍の沙汰があって、遠島ということで落着しました。これが作り話だと、娘や芸妓や其の情夫の定次郎の方にもいろいろの疑いがかかって、面白い探偵小説が出来上がるんでしょうが、実録ではそう巧く行きませんよ。ははははは。ただちっとばかりわたくしの味噌をあげれば、はじめから芸妓や情夫の色っぽい方には眼もくれないで、なんでも善人の親父の方に因縁があるらしいと、その方ばかり睨み詰めていたことですよ。腕に入墨がはいっているくらいですから、新兵衛はその前にも悪いことをたくさんやっていたんでしょうが、折角善人に生まれ変ったものを可哀そうなことをしました。河童をほうり出した武士ですか、それはどこの人だか判りません。その人は向島で河童を退治したなどと一生の手柄話にしていたかも知れませんよ。まったくその頃の向島は今とはまるで違っていて、いつかもお話し申した通り、狸も出れば狐も出る、河獺も出る、河童だって出そうな所でしたからね」
「蛇も出たんでしょう」
「蛇……。いや、謎をかけないでもいい。ついでにみんな話しますよ。しかしこの蛇の方の話は少しあいまいなところがあるんですね。まあ、そのつもりで聴いてください。場所は向島の寮で、当世の詞でいえば、その秘密の扉をわたくしが開いたというわけです」